ネタやらなんやら

□でも
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「もう笑わないから」


「?」


そうぼそっと何か聞こえ立ち止まる



「ねぇ」


「…」


「もうおれ、笑わないから」


もう一度大きく言われて唇を噛む


「だからアスタ」

こっち向いてよ



ああ、何でお前は泣きそうな声をしているんだ



「すまない」


振り返って言う


「すまない」



「謝らないでよ」


いつもならへらへらと笑っている顔がくしゃりと歪んでいた


「お前は笑っていたほうがいい」


そう言うとすぐに嬉しそうに口元を緩めた


ああ、我輩もヴァンツみたいな奴を好けば良かったのか


だが我輩はこいつの気持ちに答えてやれない



我輩の愛する者は一人だけなのだから


あの人が他の誰を抱いたとしても、他の誰が好きであろうと


「すまない」


「何で謝るんだよ」


ヴァンツが不思議そうに言う


「お前は本当に我輩のことが好きなのか」


「うん」

また曇りのない笑顔、でも知っているんだ


「すまない、その気持ちには答えられない」


一瞬目を見開き、悲しそうにヴァンツが笑った



「それでもすき」


知ってるんだ



「我輩を好いてくれてありがとう」


でも


(我輩には愛する人も子もいるのだ)

(そう言おうとして口を閉じた)



(我輩は臆病者だな)



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