07/02の日記

13:37
拝啓、愛している人 Free!真遙
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すき…きらい…だいすき…だいきらい…

傷付き、傷付けたけど…

俺はお前が大切だった


この気持ちを伝えることはまずないし
伝えられない

想うだけがどれ程辛いことなのかも知っているから…

届かないことは知っているが…
お前に手紙を書いてもいいか?





暖かな陽が白く静かな室内を照らす

整った美しく透明感のある肌を持つ黒髪の彼は眠っているように見えるが、彼は既にこの世にいない

ベットの縁に茶髪の彼が寄り添うようにして寂しそうに微笑んでいた

しかし彼の目に涙はなかった


真「俺って酷い奴だったんだね…

幼馴染みでいつも一緒にいたハルが死んだって涙のひとつも出てこないんだよ?

俺って酷く薄情なのかな…」


語りかけながら動かない冷たい手を撫でた

あんなに綺麗に水を掻いていた手はこんなに細く弱々しいものだったとは思えなかった


将来オリンピックで赤髪の彼と肩を並ばせながら競いあっていくものだと勝手に思っていた

いや、東京の大学に進学すると決まった時点でそれを疑わなかった

その時にはもうその期待に応えられなかったのを知らずに願った


遙の様子がおかしいと思ったのは1週間前…
淡い期待を抱いていた夢が潰えたのは3日前の事

慌ただしく七瀬家から遙を連れて遙の両親が去っていった

その時に真琴は見てしまったのだ…
吐血し青ざめた顔をした遙を…

それからそんなにかからずして遙の両親から遙はもう長くないと連絡が入った


医者「七瀬くんはよく頑張ったと思います

何せ余命3ヶ月ももたないといっていたのに1年もの時間を過ごしてきましたから…」


医者いわく末期のすい臓がんだったらしい

去年の2月に気付いたときには手遅れで、薬と放射線治療で完治は絶望的で、手術をすれば望みがあったが遙本人が拒んだそうだ

医者は遙の意志をくみ、鎮痛剤とガンの進行を抑制する抗生剤を処方していた


その頃からだ…
遙の気持ちがわからなくなったのは…



真「俺にも隠してたんだね…

誰にも言わずに、一人で抱え込んで…


今だから言うけど、俺…
ハルが好きだ、愛してる

遅いよね…
最期にハルの顔みたときに言おうとしたんだけど結局言えなかった

だって…」


―――死に逝くハルに重荷になるから


そんな事出来ないから…

俺はこの気持ちを隠して最期まで生きていくよ―――


真「不思議なんだ…

そうするって決めたら心が軽くてさ


初恋は俺達一緒だったね
突然の出会いだったけど次に会ったときには俺の手の届かない人になってて…

ハルだけがライバルで、俺なんかおまけでさ…」

凛「お前がいたからあのハルがいたんだ

真琴がいなけりゃもう一度泳ぐとは言わなかったからな」

真「凛…どうしてここに?」

凛「渚や真琴の家族に止められたけどよ…

ハルに頼まれたことがあるから…な…」

真「え?」



凛は優しく真琴を抱き締める

そして耳元で呟いた


凛「ハルからの最期の伝言だ…
『今までありがとう、愛してた』だと…」

真「………うそ…だ…

だってハルは凛の事…」

凛「俺もハルもお互いに憧れてたんだ…
恋愛感情なんかなかったんだぜ…?」

真「うそ…そんな事…」

凛「そんなに信じられねぇならこれを見ろ」



淡い黄緑色の封筒には遙の達筆な文字で真琴へと書かれていた

気持ちを落ち着かせて手紙を開き見る

『拝啓、愛している人

この手紙を読んでるということは俺は死んだのだろう

あまり手紙は得意ではないし、気持ちを伝えるのも苦手だ

病気の事黙ってて悪かった
凛と親にしか言ってなかったんだ…

楽しそうなみんなを見てたら言い出せなかったし、悲しませたくなかった

凛にも言うつもりはなかったんだ
偶然宗介の通院についてきた時に知られたから仕方がなく話したくらいだ


真琴は俺が凛の事好きだとか思ってるが、凛とは友達でライバルなだけだ

俺が好きなのは真琴…お前だけだ…
愛してた…死んでも愛してる

俺なんかに縛られず自由に生きて欲しい
俺への気持ちを忘れて欲しい


…もし叶うのならばお前から気持ちを聞きたかった

遙』



真「…狡いよ
気持ちを知ってたんだね

ハルへの気持ちを…俺が…忘れるなんて出来ないよぉ…」


手紙を読んでいる途中から真琴の張り詰めていた糸が切れた


真琴の頬を透き通った涙が滑り落ちる


嬉しいはずなのに悲しみの涙が頬を伝い、数滴遙の手の甲に落ちる



声をあげて泣いた姿をみて凛は遙の事を酷いやつだと思った











拝啓、愛している人

お久しぶりです、俺は元気でした

東京ではたくさん学んで、たくさんの笑顔を見てきました

凛ともたくさん遊んだし、オリンピックでの活躍も見てきました


長い間お待たせしました…
もうすぐそちらへ逝きます…

まだ俺の事愛してくれますか?
あのときの願いを叶えたいと…返事を直接言いたいと思うのですが…


それを赦してくれますか?




―――――

『俺も好きだよ…愛してる』

『………返事が遅い』

『ごめんね、ハルちゃん…

これからは永遠に一緒にいるから…』

『そんなの…あ、当たり前だ///』





届くはずのない手紙の思いは泡のように消えるのだと思っていたけど…

それは消えるのではなくあちらに届いたのかもしれないね…


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とある漫画を見て思い付いた物…

切ないようなお話に仕上がっていればいいけど…

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