‡裏‡

□【背徳の鎖を手繰り寄せし者の名は―後編―】
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「やっぱ、苦ぇや・・・なんだ、せっかく来たってのに、歓迎してくれねぇんか?」

悟空のおどけた表情とは対照的に顔を引き攣らせた悟飯の歯の根が、カチカチと微かな音を立てて鳴った。
地球の平和を破壊せんと目論む敵に向けられる時にはこれ以上もなく頼もしい父の怒りが、いざ自分に向けられるとなると恐怖以外の何物も感じられない。
その悟飯の恐怖心を更に煽る言葉が、声音も低く悟空から発せられた。

「悟天とあんなことになってりゃあ、歓迎なんか出来るわけねぇか」

「!!」

途端に二人の間に流れた凍てついた空気に、悟飯の息も心臓も凍り付く。
ただ、ゴクリ、と唾を飲み込む音だけが悟飯の耳に嫌に大きく聞こえた。

「びっくりしたぞ。まさかオラの長男と次男が、あんなことになってるなんてな!」

悟空が一歩前に進めば悟飯が一歩下がり、悟飯が一歩下がれば悟空が一歩前へ進み出て、悟飯は徐々に書斎の中央から窓際に設置されたデスクへ、デスクから壁際へと追い詰められてゆく。

「ど・・・どう、して ・・・」

「どうして・・・?真っ昼から見て下さいと言わんばかりにあんなとこでヤッてたのは、おめぇ達じゃねぇかッ!!」

「っ!!」

驚きで取り落としたコーヒーカップが焦げ茶色の染みをカーペットに残しながら転がる軌跡を目で追う余裕もなく、悟飯はただ黙って悟空を見つめるしかなかった。
ひたすら主を待ち続ける明度の落ちたパソコンの画面が、追い詰められ、愕然とした悟飯の姿を映し出していた。

「あそこ・・・な、ウーブのいる南の島からここに帰るまでの直線上にあるんだ」

「・・・」

「オラはあの時、ウーブの修行が一段落ついて、おめぇとパンに会いに来る途中だった・・・」

「と、さ・・・」

「オラのいねぇ間に悟天がおめぇに手を出したことくれぇ、すぐに分かったさ。だけどオラがもっと許せねぇのは、おめぇがオラの気にも気付かねぇくらい、悟天の上で夢中んなって腰を振ってやがったことだッ!!」

もしもあれが、悟天からの無理矢理な行為だったならば、悟空は迷わず止めに入っただろう。
しかし、明らかに悟飯も楽しんでいた為、止めに止められず出るに出られず、震える拳を握り締めてその場から立ち去るしかなかった。
だから、余計に怒りも大きかった。
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