‡裏‡

□【あいつの憂鬱―前編―】
1ページ/10ページ


「何の冗談だ、それは?」

ハイスクールから帰宅した悟飯を一目見るなり、ターレスは面白そうにニヤリと哄った。

「こ…これは、その…」

詳しく説明すれば長くなる言い訳に返答に窮した悟飯は、どうしてターレスにバレたのだろうかと、驚愕と困惑に白い頬を引き攣らせた。
季節は秋真っ只中、朝夕の肌寒さを凌ぐ為に薄い上着が必要なシーズン。
例に洩れずこの日の悟飯も薄手の上着を羽織っており、上着の上からでは体の変化はわかり難い。
故に、ハイスクールから帰宅した直後にターレスに見破られるなどとは夢にも思っていなかった。

「あ・・・あの・・・、こ、これには深い理由があって・・・。・・・つまり、その・・・、ビ、ビーデルさんが・・・」

悟飯としては夕食中にゆっくりとターレスに話すつもりでいたのだが、そんな悠長なことも云っていられない状況に、言葉を覚えたての子供のようにしどろもどろな説明を始めた。
説明を始めてすぐに、やはりこの話は夕食時でなくて良かった、と思い直すこととなる。
何故なら悟飯の帰宅をニヤけ面で出迎えたターレスが、悟飯のガールフレンドの名を聞いた瞬間、目尻をピクリと吊り上げたからだった。


春に都心部にある有名なハイスクールに入学した悟飯は、ターレスのマンションに身を寄せていた。
ここからなら、孫家からの半分の時間でハイスクールに通学が出来る。
その利便性と、加えて悟飯の遠縁の叔父にあたるとチチに名乗ったターレスが、悟飯のハイスクールの学費、入学金、通学費用、その他諸々の費用をすべて負担するという孫家にとっては有り難い申し出に、嬉々としてチチが乗っかった。
恐らくは、当のターレスが、巷でメディアを賑わせている超売れっ子の有名一流モデルであったのも、チチの心証を良くした一因であったろう。
当然父親の猛反対はあったが、これは母親の『働かねぇ悟空さに反対する資格はねぇだ!!』の一喝で解消された。
こうしてめでたく春からターレスとの共同生活を開始した悟飯だが、悟飯のハイスクールでの新たな交遊関係を、どうやらターレスは快く思っていないらしかった。
生まれて初めて経験する集団生活と、初めて出来た同年輩の人間の友人に、悟飯のハイスクール生活は驚愕と興奮の連続だった。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ