‡悟飯受けの部屋‡

□【神様の誇り】
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地上からは確認の不可能な上空に存在する、地球を治める神の住まう城。

一般人の立ち入りを許さぬその城では、地上を徘徊する不気味な怪物を意識してか、名のある格闘家達のささくれ立った神経がピリピリと辺りを包んでいた。

無駄口を叩く余裕も気力もなく誰もが押し黙った張り詰める緊張感の中で、二人の子供のうち、どちらが先に言い出したのかー


『勉強しなきゃ』


その言葉を皮切りに、非日常の中に佇む数人の大人達を尻目に、二人の子供は日常の課題を黙々とこなし始める。

一人は、まるで暗号のような記号と数字の折り混ざった難解の数式をさほど時間をかけずにスラスラと解き、地球人とは掛け離れた容姿のもう一人は、古代の象形文字でも見たこともないような不可解な文字列を相手に、これまた短時間で次々と問題を解いてゆく。

互いのおでこを突き合わせるかのように向かい合い、一心不乱で紙の上に鉛筆を走らせる子供達の様子を傍で見守るクリリンが、ふとある疑問を口にした。


「なぁ、悟飯とデンデ、どっちの方が頭が良いんだ?」


いきなりの突拍子もない質問に悟飯とデンデは点になった目で互いに見つめ合い、次の瞬間にはテレビでこれ以上もないギャグを聞いた茶の間の視聴者のように爆笑した。


「クリリンさん、突然何を言い出すのかと思えば・・・」


「そうですよ、ヤダなぁ・・・」


目尻の涙を拭き拭き答える二人の声は込み上げる笑いにトーンとイントネーションが外れ、いつまでも腹を抱える子供達に、クリリンはこれみよがしに大きく腕を組んだ。


「何だよ、お前ら。オレは爆笑ネタを披露した覚えはないぞ。ただ単に、『どっちの方が頭が良いのか』って聞いただけだろ」


女性には『箸が転がっても可笑しい時期』というものがあるらしいが、果たして男の子供にもそんな時期があるのだろうか、と内心で呆れながらも声高に抗議すると、二人の笑い声がピタリと止んだ。

途端に、『そんなのは決まっている、自分ではなく、相手の方だ』と口を揃えて二人同時に真顔でまくし立てるものだから、クリリンは組んだ腕を解いて、『やれやれ』と大袈裟に肩を竦めた。

奇妙なところで仲の良い二人の子供の様子が、可愛らしい外見も手伝って微笑まくないと言えば嘘になる。
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