バレンシアで乾杯を

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「オ嬢様ハ…」

ロボットが不意に口を開いた。
産まれた時から部屋に押し込まれ、人間に触れたことがないため、彼らを見た時にどんな反応をするか分からない。
部屋には扉が着いておらず、窓も天井についている小窓のみの空間で、自分おろか他のロボットでさえ部屋には入ったことが無い。
一応、学習ロボットを昔に渡しているがどんな育ち方をしているか分からない

「…まさに開かずの間って事だね」

ロボットは静かに頷くと立ち止まる。そこは何の変哲もない無い壁だったが膝あたりの位置に小さな小窓が着いていた。その小さな小窓は、紙パックのジュースを横に向けた大きさしかなく、手はおろか身体など絶対に出せない作りとなっていた。
ふと疑問に思った1人が、何故壁を破壊しないと訪ねた。ロボットは少し沈黙したあと、キョトンとしたトーンで何故破壊する必要があるのかと逆に問い返した。
彼らは、ただ単純に中にいる子供を成長させることを目的とされ、壁の破壊はデータに入っていないと答えた。それと同時に今回ヴァリアーが来ることは、子供が生まれた時から決まっていたため、丁重にお出迎えするようインプットされていると付け加えた。

「よーするに、この壁壊していいってことだろ?」

痺れを切らしたベルフェゴールは、同僚やロボットの回答を待たず、自慢のナイフで壁をブロック型に切り刻んだ。
中は思っていた以上に広く、大人でも1人で暮らすのには十分な広さだった。しかし、異様なのは広さではなく部屋全体が黒で統一されていたことだった。説明にあったように、天井には小さな天窓しかついておらず、陽の光で部屋を照らすことは不可能に近かった。そんな異様さに3人は若干の気味の悪さを覚えながらも、奥に扉が備え付けられているのを発見した。

「ここにいねぇつーことは奥かぁ?」

スクアーロの言葉に、ベルフェゴールは上機嫌に扉に近づき、ドアノブを回す。
中は手前の部屋ほど広くはなく、寝室なのだろうかキングサイズのベッドのみが置かれていた。しかし、異様な部屋にこのベッドだけは抗うかのように″白″かった。汚れ一つないその白に包まれて1人の少女がすやすやと規則正しい寝息を立てていた。

「え、これ王子にちょうだい」

「「ダメだぁ!! / だめだよ」」

欲しい欲しいと連呼するベルフェゴールの後ろで布の摺れる音が聞こえる。振り返ると半身を起こし、伸びきった前髪の間から、山吹色の瞳を覗かせている少女の姿があった。
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