バレンシアで乾杯を
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「Tanti auguri !!」
煌びやかなその会場には、大勢の大人が話しに花を咲かせていた。あるものは、会場の主を称えるもの、あるものは、新たな商法について語っているもの。
そんな大人ばかりの場所に、異質な雰囲気を醸し出している少女の存在があった。
淡い金色の髪に深い紫の瞳、そんな彼女の周りを囲っている大人でさえ、自ら跪き彼女を見上げていた。
「麗しきのレティ嬢、本日は晴れの舞台おめでとうございます。」
似たような会話を幾度とされている彼女だったが、その表情は終始明るく、挨拶をいただく全ての人へ頭を下げていった。そんな彼女の前に両親に連れられて、1人の初老の老人が歩み寄ってきた。
「こんにちは、レティちゃん」
優しそうな老人に彼女は数日前に教えてもらった、ボンゴレ9代目ということに気がついた。慌てて座っていた椅子から飛び降り、ボンゴレ9代目の元へ歩み寄っていく。
『初めまして、9代目。レティです。これからは、この命尽きるまでボンゴレのために尽くします。』
深々と頭を下げたレティに、9代目は優しく頭を撫でると彼女の両親の方へ向く。険しい顔つきで何かを話始める。しばらくすると、どこかに連絡を入れ始めた。
一段落したのか、レティの方を再び振り返った時には、先ほどの優しい顔に戻っていた。
「レティちゃん、行こうか」
彼女はそう告げられると、意を決したように頷き、最後に両親の方を振り返った。そして寂しそうな…どこか諦めの着いた顔で一瞬両親を見ると、いつもと変わらない満面の笑みで手を振り、会場を後にした。
「レティちゃんには、日本へ行ってほしいんだ。」
『日本……ジャポーネですか?』
迎えに来ていたヘリに乗り込むと同時に9代目から告げられた言葉にどういう意味か訊ねた。
「ボンゴレの座を日本にいる私の孫に託そうと思っていてね。」
ボンゴレ9代目ではなく、10代目の守護者として、自分のやることを全うする。少し考えた彼女は9代目に視線を合わせると大きく頷いた。
『よろしくお願いします。』
ヘリは日本に向けて大きく飛び立った。