裏側

□4.5
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…迂闊だった。最近は敵対勢力がいなかったことをいい事に警戒していない時だった。先日9代目に連れられてやってきたあいつは今、ツナたちと一緒に生活していた。狙われるのは当然だった。
あいつが攫われたと思われる廃工場にツナたちと向かう。
そこには反ボンゴレだろう、大量の敵対勢力が待っている。俺らを発見すると一斉に飛びかかってくる、それらを一掃するが量が多く倒しても倒しても湧き出てくる。

「クソ!きりがねぇ!」

獄寺が吠える。それは向こうも同じようでリーダー格の男が苛立ちを見せていた。ふと、足元にいる彼女を見ると下世話な笑みを浮かべた。そして彼女の髪を掴みあげると大声を上げる。

「ほら!こいつが大事なんだろ?」

そう叫ぶと目の前に投げ飛ばす。お互いの動きが止まったと同時に男は彼女目掛けて持っていた刀を振り下ろした。

「っ!!やめろ!」

ツナが叫び飛び出すが、間に合いそうにない。誰もが彼女の死を予想した時、横から山本が飛び出す。そのまま彼女を抱き上げると自分たちのところまで転がる。

「ははっ、大丈夫か?」

顔を上げた山本が心配そうに顔をのぞき込む、彼女自身に怪我は無いようだったが、山本の腕は斬撃を受けてしまったようで、鮮血が溢れていた。

『っ!血が!ああ!』

ポタリと流れ落ちたそれは彼女の頬にぶつかる。
その瞬間、2人を包み込むかのように空から光の柱が落ちてくる。昼間のような明るさで廃工場が照らされる。その光が全て彼女に収縮され、再び夜の闇が辺りを包み込んだ。
少しぼんやりと輪郭が光って見えるのは、俺だけではないらしく、皆が目を擦っていた。彼女は目から大粒の涙を落としながら周りを見渡すと、ゆっくりと目を閉じた。

『…ああ、悲しい。』

そう呟くとゆっくりと両手を広げ、天を仰いだ。それと同時に再び空に無数の光が差し込む。それは、ツナたち除いた敵対勢力の上へと降り注ぐ。

「なんだ、これ…は…っっ??!!」

光を受けた者がゆっくりと行動を止める。完全に動かなくなるまで光は当たり続けた。数名の取りこぼしを確認すると何処からともなくレイピアを抜く。そのまま軽やかな足取りで未だに残っている相手へと斬撃を繰り出す。相手も反撃を繰り出すが、当たる寸前で溶けるように消える。そのまま軽く撫でるように剣先を相手の皮膚へと滑らせる。

「ちっ!くそが!」

斬られた者たちが止血をするが一向に血が止まらないのに違和感を覚える。次第にその場に立っているのは彼女と自分たちだけになった。動く者がいなくなったことを確認すると彼女へと駆け寄る。本人はその場にへたりこみ、子供のように泣き声を上げ始めた。
訳を聞こうと思ったがこの様子では無理そうだと、まだ元気がありそうな奴におぶるよう声をかけた。

『…あの子も覚醒するよ。イタリアに行かないと』

背後から聞こえたその声は彼女の声では無かった



〜とある最強アルコバレーノの話〜
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