裏側

□2.5
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システム音と共に目の前に光が差し込む。視界を上げると若い夫婦が立っていた。彼らは今からここを立ち去るらしく、早口で何かを喋っている。最後にCDディスクを手渡される、どうやらこの中に仕事の内容がインプットされているらしい。腹部にある挿入口へとディスクを挿入する。途端に頭部に電撃が走ったかのような感覚に陥る。しばらくすると、自分のしなくてはならない事が鮮明に理解する。再び視界を上げると目の前に居た夫婦に了解したことを告げる。彼らは少し安堵したのか、静かに微笑むと玄関へと足を運んで行く。

「…イッテラッャイマセ」

そう答えると女性の方は少し寂しそうな顔をして返事を返した。彼らが見えなくなるまで見送りを続ける、森は青々と生い茂っていた。


森の落ち葉が数回落ちきった頃、この屋敷には自分の他に数体のロボットが増えていた。今までは自分だけだったため、屋敷の手入れなどに回れなかったが、最近では安定してきていた。今日も自分は任された仕事を行うべく、パックに注がれた水とベージュ色の固形物を壁に設置してある小窓から中へと入れていく。
中には夫婦の子供がいるらしい、その子をある歳になるまで生かしておく必要があるらしい。人間の事情はよく分からない。
ふと、以前にインプットされた情報の中から超小型ロボットのことを思い出した。この小窓ギリギリを通れる大きさだったはずだ。試しにそれも一緒に入れてみた。


それから再び森の落ち葉が数回落ちた。屋敷には数え切れないほどのロボットが、存在している。最近では壁の前を通ると時々だが女の子の声が微かに聞こえてくる。死んではいないらしい。

そんな事を思いながらまた落ち葉の落ちる時が来る。今日は珍しく月も何も出ておらず、外は真っ暗だった。屋敷の中も暗く、何体かのロボットがライトを付けたながら移動していた。
そんな時、屋敷内の明かりが一斉に灯された。それと同時に警報音が鳴り響く。周りのロボットが慌てて玄関へと向かっている。一度制御ルームへと確認のため、足を運ぶと侵入者を確認する。
彼らの姿を確認すると、緊迫状態の続く玄関へと歩みを進めた。

「子供タチガ失礼シマシタ」

何度森の紅葉を見過ごしてきただろう…やっと彼女は開放されるようだ。



〜とあるお世話ロボットの話〜
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