バレンシアで乾杯を

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午後、イタリアの空は快晴であった。暑くも寒くもないその場に現れたのはアリスだった。一緒に来ていたマーモンと広場のベンチに座りながら、時折高く水しぶきが上がる噴水や街を歩く人を眺めている。そんな彼女の後ろから人数分のジェラートを持ったベルフェゴールが現れ、隣に腰掛ける。手に持っていたジェラートをマーモンとアリスに渡す。
自分の瞳と同じ色のジェラートをしばらく眺めていたが、小さく口を開け齧り付く。シャリッ…と音を立て口の中に入ってきたそれに、彼女は目を丸くする。

「おいしー?」

ベルフェゴールの問いに大きく頷くと、一口、また一口と口の中へジェラートを運んでいく。最後の一口を食べ終わると、ふと遠くに見える人集りへ視線を移した。

『あれは…?』

アリスの指さす方向には、広場にいくつものテントを広げ、賑わいを見せている市場があった。マーモンがあれはマーケットだねと答える。
"マーケット"…その言葉に聞き覚えがあるのか、彼女はチラリと彼らを見る。その表情は無だったが、興味があると言わんばかりのオーラが滲み出していた。2人は時間を確認すると、ベンチから立ち上がり彼女に行こうと声をかける。


3人はマーケットの入り口に立っていた。大体のマーケットは午後の早い時間に閉まるため、この時間帯は人もまばらになってきていた。しかし、まばらとは言え人はまだ多く、油断するとはぐれてしまう可能性があった。ベルフェゴールは隣に立っていたアリスに離れないように念を押す。彼女も小さく頷いため、大丈夫だろうと彼は前に歩みを進めた。
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