企画モノ
□チョコよりも甘いもの
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旧校舎の隅にある数学科準備室には、いつも遅くまで灯りが点いている。
仕事熱心な斎藤が、担当クラスの進み具合の確認や、成績が芳しくない者への教え方などを考慮していたりする為だ。
美しい容姿に、心奪われる生徒は多かったが、生真面目な性格とぶっきらぼうな物言いが、彼に直接関わろうとする生徒を遠ざけた。
彼自身、それについては何とも思っていなくて、寧ろ有り難いとさえ思っていた。
煩わしいことが少なくて済む。
そして何より……。
「斎藤先生……いらっしゃいますか?」
控えめなノック音と、愛しい声に、斎藤は口元に笑みを浮かべた。
何より彼女さえいてくれればいいと思っているから……。