原田左之助
□7.余裕と牽制と再確認
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そうして迎えた合宿当日。
7時の電車に乗らないと間に合わないからと5時に起きた千鶴は、隣で眠る原田を起こさないようにそっと布団から抜け出した。
温かい緑茶を飲んで一息吐いてからキッチンに向かい、原田のお弁当を作り、身支度を整えると6時になっていた。
そろそろ原田さんを起こさなくちゃ……。
エプロンをして鍋にお湯を沸かして細く切った大根を入れてから、千鶴は寝室に向かった。
「原田さん、起きてください」
扉を開けると、いつもなら寝ている原田が既に起きて伸びをしていた。
「早いですね」
「たまにはな」
欠伸を噛み殺しながらそう言うと、原田はベッドから腰を上げて、千鶴の額に口付けた。
「おはよう」
「おはようございます」
朝一番の行事を終えると、千鶴が朝食を作る間に原田は洗面所に向かう。
キッチンに向かえば、テーブルには温かいご飯。
原田は思わず微笑むのを抑え切れないまま椅子に腰掛けた。
「いただきます」
「はい」
行儀良く手を合わせた原田に微笑みながら、千鶴は向かい側に座った。
「もう支度出来たのか?」
「はい! 準備万端です」
「なら良かった」
大根の味噌汁を啜りながら、原田はチラリと千鶴の表情を伺った。
いつもと変わらない笑顔にホッとする。
千姫って子……ほんとに黙っといてくれたんだな……。
原田がニヤリと口角を上げたのに、千鶴は気付く事が無かった。
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