原田左之助
□7.余裕と牽制と再確認
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いよいよ明日から1泊2日の合宿。
千鶴は寝室でいそいそとボストンバックに荷物を詰め込んでいた。
シャツの替えを持って……あ! 下着はポーチに入れてこう。
そして最後にちらりと視界に映ったのは……
「水着着るのか?」
「ひゃあっ!」
背後から声を掛けられて、思わず跳ね上がってしまった千鶴に、原田は苦笑した。
「驚きすぎだろ」
「お風呂に入ってらしたので……まだ来ないと思ってたんです……」
涙目で見上げると、原田の視線は水着に向けられていた。
「まだ泳げるってお千ちゃんが言っていたので、用意しようかなぁと……」
小花柄のビキニは、千鶴の白い肌に映えるだろう。
想像するだけで可愛いことが十二分に分かる。
首の後ろを結ぶタイプか……。
俺だけが見るなら是非着てくれと言いたいとこだが……。
許嫁の身だが、未だに清い仲。
想像してヤキモチ妬くなんて……俺もまだ若ぇな……。
原田は苦笑しつつ、千鶴を手招きした。
何ですか? と首を傾げながら近付いてきた千鶴をひょいと抱き上げて、ベッドに腰かける。
「は……原田さん?」
原田の膝の上で横抱きにされた千鶴は、顔を真っ赤にして"恥ずかしいから下ろして下さい"と懇願したが、原田に腰をがっしりと掴まれて無駄に終わった。
困ったように見上げれば、原田がそっと額に口付ける。
更に真っ赤になって俯きそうになれば、許さないとばかりに上向かされて唇に柔らかな感触。
始めは啄む様だったのに、段々と呼吸すら奪うものに変わると、千鶴はもう無理だと首を微かに振った。
「ふぁ……」
漸く離れた時には、千鶴は身体から力が抜けていた。
「あんまり煽るなよ?」
千鶴の濡れた唇を指先で拭うと、原田は力の抜けたその身体をベッドに横たえさせた。
パジャマのボタンを一つだけ外して鎖骨を外気に触れさせれば、千鶴がピクリと跳ねた。
原田の髪が首筋や肩を擽ったかと思えば、鎖骨にチクリとした痛みが走る。
「合宿中も俺の事忘れないように……まじないだ」
低く囁いた原田に、千鶴は小さな声で"忘れるわけありません"と涙目で訴えた。
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