原田左之助
□4.試される時
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「…………はぁ」
重い溜め息を吐いた原田は、耳を澄ますと聞こえる水音から気を反らすのに必死になっていた。
落ち着け……見境の無ぇガキじゃあるまいし……
お前は大人だ、と何度も呟く。
チラリと横を見ると大きめのボストンバックがソファの横にある。
駄目だっ!
とりあえず今日はソファで寝よう……。
バックを部屋に運んでやろうと腰を上げると、カチャリとドアが開く。
「あの……お風呂ありがとうございました」
チェックのパジャマを着た千鶴。
まだ水気を帯びた髪。
「…………何の罰ゲームだ……」
原田の声は、闇に虚しく消え入った。
千鶴が今居るのは原田の住むマンション。
お泊まりなんて可愛いものであればいいのだが……。
「あの……」
ボストンバックを手にした原田に付いてきていた千鶴は、申し訳なさそうに俯いていた。
「そんな顔すんなよ」
「でも……こんなご迷惑を……」
しょんぼりと項垂れている千鶴の頭をくしゃくしゃと撫でて、原田は部屋の扉を開けた。
「ま、試練だな」
「試練……ですか?」
小首を傾げる千鶴に、原田は苦笑した。
俺がどれだけ千鶴を大事に出来るかを試されてんだろうな。
原田は、こうなった経緯を思い出して更に苦笑した。
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