おいでませ☆俺屍♪

□花、春を告げる。弐
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──盛夏。



「それではッ、イツ花は宴の用意して待ってま〜す♪当主様、御出陣!!」

と、明るく見送られた、当主曰く甲子園…もとい、夏の朱天童子討伐隊選考試合の結果は…。

悪夢の初戦──運悪くチームランク最上位チームに当たり、後衛で防御してた年少が、飛び蹴りで危うく落ち掛ける、という事態に、敵大将をフルボッコにしての有効勝ちを余儀なくされた──以外を、オール1本勝ちにて優勝をもぎ取り、帝からお誉めと激励の言葉と報奨を賜り、

「んふふふ〜。報奨も賞金もたんまり戴いたし、結果は上々♪者共、今宵は無礼講じゃ〜☆なんてね♪」

当主以下、俺達は意気揚々と引き上げた。



家に帰ると本当に宴の用意が整っていて、(イツ花め〜、初戦敗退してたら、残念会とか言うつもりだったな!?レベルで。)風呂や着替えも慌ただしく、祝勝会となった。

身内だけの無礼講という名目と、来月元服の前祝いも兼ねて、俺にも酒が振る舞われ…ってか、面白がって飲まされて。

暮れ六つ半を過ぎるころには、早々に年少組が寝始めた(正直、俺もぐらぐらしてた)ので、それぞれを部屋に運びつつ、宴は解散となった。


いざ自室で床を延べると、逆に目が冴えてきた。開け放った障子窓の向こうに下弦の月が浮かぶ。
俺は酔いざましを思い立ち、蔵へ向かった。


目的のブツを得て、再び自室に戻ると、弓月の明かり差す床に、二張の弓を並べる。
片方は親父の形見。もう片方は…
まさに今日、帝より賜った名弓。

「コレはちょっと…参ったな…。」

現時点では破格の攻撃力に加え、火属性を持ち合わす強弓──近年、宮廷での神事程度にしか使われていなかったであろうソレを──、矯めつ眇めつ眺めながら、頭では全然別なことを考える。

宴の間も、当主は上機嫌だった。
少なくともそう見えただろう。
俺以外には。

そして、斯く言う俺も──アレ以来、モヤモヤしている。
日中はともかく、寝ようとすると当主のコトを思い出すし、そのまま寝付くと…、


…ヘンなヤツが夢枕に立つのだ。
(…親父ならまだしも。)


そのヘンなヤツ──多分神様だと思う──は、ほぼ連日、俺に吹き込む。


アイツが好きならヤッちまえ。
知らねェなら教えてやるカラ。


…なんつう神様だ。
正体調べてやりたいけど、神様一覧や何かは、やっぱ門外不出っぽい雰囲気で…。


んぁあ〜またモヤモヤして来た!!
──頭を振って深呼吸する。
慣れないのは弓か、俺か…、無理矢理に手懐けるように、胡坐のまま見えない矢を引き絞り…、

「春樹、起きてる??」

「!!痛ってぇえ〜!!」

まさに今想う当主の不意な訪問に、弦を絞る右指が誤射──放たれた弦は左指を強かに打ち。
彼の人は慌てて襖を開け、飛び込んで来た。

「なぁにやってんの?!」

「試し、射ち、みたいな??さっすが、強弓…言うこと聞かねぇや」

「ほら、貸して!!」

側に膝を付いた当主が、一筋の血が滲む俺の指を口に含んだ。

「!!…っ」

感じたことのない感覚が脳天に突き抜ける。

「我慢する!!男の子でしょっ!?」

「い、や、違…っ…!!」

当主は何を思ったか、再び含んだソレを舐めて来た。
何だ、コレ…っ!?

「まだ、痛い??」

上目遣いで見上げられて、
時間が止まったみたいに長く、
感じて、
右手で口を塞いで、首を横に振るので精一杯だった。


俺の右側で膝を抱えた当主が、ここへ来た経緯を話す。

「酔いざましの水差しに、水汲もうとしてたら、春樹が蔵に行くの見ちゃって…。弓を賜った時も、微妙な顔してたから気になってさ…」

「え!?俺そんなシケた顔してた??」

「うん、アレ、ヤバかった。」

あそこはウソでも喜んどかなきゃ、帝あってのウチなんだから、と笑う。

「だって親父の形見より立派な弓を賜っちゃあ、微妙にもなんだろ?!…それに当主も、今日何か変だぞ??優勝、決めたあとぐらいから。」

ぴたりと笑いが止んで、当主は視線を外し、身体を丸めて…でも何か腹を括ったようだった。

「…え〜、ぶっちゃけますと、
来月のあたしの交神、延期。」

「え!?」

「有効勝ちで計算、狂っちゃった」

「計算?何で?!ウチ結構、奉納点に余裕あるだろ??」

当主は下を向いて首を横に振る。

「あたしの先勝点の方。…コレじゃ娘が生まれない」

「はぁ!?」

つまり──性別制限のかかった装備を最大限に利用するために、生み分けの秘伝が一応、有り──状況によってはハイ交神☆とはいかないワケだ。

「ま、延期と言っても、再来月なんだけど。」

再来月。
再来月には、当主は…


──俺以外ノ誰カニ抱カレル


「当主っ!!」
「はいぃっ!?」
手短にあった当主の左手を取って、指先に口付ける。

「…!?…ぁ、」
計算とかはなかった。俺があんなになるのなら…、

「ふ、ゃ…あ、…」
当主も右手で口を塞ぐのが見え、指先から舐めて根元へ向かう間に、右手を掴んで床に付けた。

「?!はぁっ、や…、んっ、放して、」
甘い声が震える。
「…俺もさっき、こんなだった」
「…え??」
「当主が俺の指舐めた時」
舐めてた指を絡めて繋ぎ、床に付ける。

「あ、アレは…、手当てでしょ…??」
「俺、…おかしくなりそうだった。
酒のせいかと思ったけど、今、当主だって…快かっただろ??」
「そん…、んんっ」
言い終わらない内に口付けて。
嘘。俺、もうおかしくなってる。
そのままゆっくり布団に横たえた。(俺、準備イイ〜♪)


「…ぁ、っ」
唇から、頬
首筋と唇を這わせて
襟元に指先を忍ばせかけて、
合わせが少しキツかったから、背中に手を回して帯を緩めた。
その間、当主はずっと俺を見てた。

前髪を掻き分けて額に触れる。
「怖い??」
「す、少し、だけ」
「俺も」
「何でっ!?」
「…初めてだから」
「そ、ソレはコッチのセリフだよぅ…」

少し怒った頬が瞬時に染まって、
もう止められるはずがない…!!

「当主っ!す…、」
「ふぇ?!」

(…き、だ。)

でもたった一言が、
やっぱり言えなくて、

当主の相槌とも何とも言えない声を奪うように、改めて口付けながら緩めた襟元は、容易く俺の右手を受け入れた。


手始めに(仰向けなので)控え目な膨らみを包むと、手の平に優しい主張が触れる。
「あんっ、」
柔らかな感触が惜しくて、ずらした指だけで転がしてると、
「は、…ぅう、ん…」
ソコはやがて薄桃の小さな蕾を結んだ。

向かって左側の襟は、片肌になるくらい大きく開いた。(仰向けなので)控え目な薄桃の高みに、衣の刺激なのか反応があったので、悪戯に一舐めすると、
「ひゃあん!」
「ぉお?!」
目の前で濡れた蕾が生まれるのが見えて、堪らず口に含んだら、一瞬にして消えた。

「は、ぁ…、あぁん、」
しばらく舌で探してみたけど見つからず、諦めて唇を離す。
「何だコレ…」
濡れた蕾はちゃんとある。まるで狐につままれた感じだ。
「んぅ、…そ、ソコばっか…、イジメ、ないで、よぅ…」
「あ、…えっと…痛い??」
「コッチが、す、少し」
「ご、ごめん」
そぉ。舐めてる間も右手はず〜っと弄ってた。けど、コッチも出たり消えたりしてて…解んねぇなぁ。


「帯、全部解いていい??」
「うん…」
了解を得ると、自分から背中を持ち上げてくれた。最初からそうしときゃよかったな…。
「あと、あの…窓…を、ね…」
「冗談、この暑いのに閉めろって!?」
「だ、だって、聞こえ、ちゃう…」
「…虫の声で解んねぇって」
「えぇ〜!?」
「閉めた所で紙一枚じゃん、第一…」
「はぁっ、」
最後に残ってた腰紐を引き抜くと、白くて小さな身体を包む合わせは勝手に解かれた。
「月が見えて最高だろ??」
っていうか、この真夏の月明かりに映える半裸、(いやコレもうほぼ全裸!)コレに勝るシチュ有るか!?


「ちょっと腰浮かせて??」
「??うん」
腰の下に手拭いを重ねて敷いた。
(悔しいけど、例の入れ知恵だ。)
…理由は怖がらせそうだから、言わないことにした。
「よぉし完了!!」
言い終わらない内に内腿を撫でる。
「ひゃんっ!?」
そうして脚の間に出来た隙間に滑り込む。撫でられた方の膝が震えてるので担いだ。
「力、できるだけ抜いて」
「う、うん」
と、言ったはいいが、あまり濡れてない…
指か舌か迷って、一先ず舐め…
「嫌ぁ!!」
やっぱり。上半身を起こして涙目だ。
「でも濡れてねぇし…」
「は、春樹に、そ、ソコ舐め…させるとか、嫌」
「でも、」
「嫌」
「解ったよ…えっと、寝て…下さい」

一瞬の間。
「ぷ、あはははは」
「だぁ〜もう、笑うなって!!」
「だぁってぇ、今夜何か久しぶりに敬語聞いたよ〜」
笑うお蔭で、寝転がっても揺れている。(いやこの視界ヤバいって。)
飲み込みたい生唾を我慢して、ギリギリまで唇を近付けると…たっぷり垂らす。
「ふぁっ!?な、なに…??」
何をしたか解ってない内に、触れるか触れないかのギリギリを、指で撫で上げた。
「ひやぁああん!!」
「!!…」
当主は一際大きく鳴いて、仰け反ると、ぐったりと動かなくなった。
「え、ちょっ…」
遅れて奥から蜜が溢れて、敷いた手拭いを濡らした。
ええと??コレって、その…
もう、イかれました!?
「マジかよ…」


…ホントは正直助かった。あんなにヤル気はあったけど、俺の身体は未だ…つまり早い話が勃つまでは行かなかったからだ。

呪われた一族は、その成長が早い代わりに、元服は例外なく等しく8ヶ月って縛りを、身を以て知らされた。

救いなのは、当主の交神が1ヶ月延びたことだ。来月は俺も元服。再来月までに、まだチャンスはある。取り敢えず、うっすら汗を帯びた当主の、前を深く合わせた。(帯は、よく解んねぇし。)

「…ぜってぇリベンジすっからな。今度こそ覚悟しろよ!?」
誰に聞かせるワケでもなく呟いて、触れるだけのキスをした。



──初秋。



今月、晴れて元服した俺は、出陣前に御神酒を押し戴き飲み干す。
此度は、討伐隊長を努めることになった。

今月攻めるは、弟帝の荒ぶる魂を括るピラミッド、もとい親王鎮魂墓。目標は只、奥へ──金色館への道を拓け──との当主のお達しだ。

「春樹の技の火なら、賜った弓で行けそうじゃない??」

あれから──当主はあの夜のコトを覚えてない??…かのように振る舞うから、俺も準じていた。

「奥に行けば硬ぇから、攻撃力より眠り付加狙って、親父の使うわ」

「そっか。まぁ今回は隊長だし、権限は春樹だよね。頑張って。」

組んでいた後ろ手を解き、当主は笑顔で俺の左肩にぽんぽんと触れた。
討伐に出れば、一月会えない。

「ああ、金色館サクっと見っけて、速攻帰って報告するから…、
部屋で待ってて。」

最後は小さく囁き、当主を背中で隠すようにして口付けた。

「!!…っ、」

今更だが、唇以外へのキスやハグは、男女問わずスキンシップ過多な当家では普通のリアクションだ。

「…ん、解った。行ってらっしゃい。
…御武運を。」

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