☆小説

□recollection…
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とても幸せでした。

そう、あんな記憶さえなければ…普通に暮らせていた。


何で…私の前から喪失(きえ)ていくの?


――…どうして兄様が…


誰かが死ねば胸にポッカリ穴が空いたような不安に襲われる。
特に、死を目の前で目撃したら…ショックで忌まわしき記憶を封印したくなる。


尊敬していて、慕っていた…

大好きなお兄様。


私の大切な…大切な…兄。



もう…


この世には存在しない。


最初から、居ないとされた。皆の記憶から削除された。
名前すら禁句…

だけど、私は一度も忘れた事ない。
鮮明に残ってるよ…


本当は…

一度だけ、たった一度だけ記憶から消しました。

苦しくって、息ができない。忘れる事により少しホッとした自分がいた…

楽になれたの。



―――…ごめんなさい。
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