まるで風船

□19
1ページ/1ページ

  

「(きあきあきあきあきあきあ…。)」

「おっとこれは重症だぜ!」


フレッドが呑気にチキンを食べている。

毎回思うが、何て思いやりのない相棒だろうか。

相棒の俺の恋を応援する気はないのか!?

そうか、そうなんだろう!?


「あれ、ジョージ君寝不足?」

「そうみたいだよきあ。」

「きあっ!?」


その名前に反応して、テーブルを見ていた視線を一気に上げる。


「きあだよ?ジョージ君おはよう。」


そこには天使の微笑みを宿したきあの姿。


「お、おはようきあ。」

「ジョージ君はホグスミードに行くの?」

「えっ!?」


いきなりのことに俺の心臓は飛び出そうだった。


「きあは…?」

「私はネビルに付き合ってお留守番。」

「そっか…。」


分っってたのに何今更またショック受けてるんだよ自分。


「ジョージ君はやっぱりフレッド君と行くの?」

「フレッドは彼女と行くんだ。結果、俺は一人だよ。」

「え、一人なの?誰か女の子に誘われてないの?」

「いや、断ったんだ。」


君と行きたかったから、なんて言えない。


「じゃあ私と行こう!」

「えっ」


きあは何を言ってるんだ?

ネビルと留守番じゃないの?

俺をからかってる?


「ダメ?」

「る、留守番じゃなかったのかい?」


やっと出た声はかなり動揺していて、裏声だった、かっこ悪いな。


「いいの、ネビルだもの。」

「ダメだよ。」


なんてとっさに言ったけど、嘘です。

本当はすごく嬉しい。


「だってネビルとの約束だし…」

「約束?」

「うん、約束。」

「どんな?」


俺が聞いたらきあは少し視線を泳がせて、それからまた俺を見た。


「あのね、」


きあの顔が近づいてきて、耳元でこう言った。


「好きな人に断られたらお留守番で、オッケーされたらその人と行くの。」


言い終わるときあは耳元から離れていった。


「だめ?」


照れたように頬を染めてきあは小首をかしげた。


「だ、だめじゃない!」


大広間全体に響くような声で返した。

フィルチが俺の名前を呼んで注意したみたいだけど、俺の耳には何も入ってこない。


むしろお願いします。

  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ