DARK MOON 〜side RED〜

□T
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最近、ラピスと一緒にいても、何だかラピスを遠くに感じる。俺と一緒にいても、心あらずと言うべきか。



「ラピス?」

「……え、何?アメジスト」

「直にクリスマスだし、そろそろ予定を決めないか?」


三年前。
婚約した時から、クリスマスはいつも一緒に過ごしていた。約束なんかしなくても、それが当たり前。だから、今年も一緒だと思っていた。

クリスマスは、ラピスの誕生日でもあるから。俺にとって、誕生日をお祝いして、ラピスを独占出来る幸せで最高の日だ。



「ごめんなさい。クリスマスは予定が入ってしまって、今年は一緒に過ごせないの」

「……そうか。なら、仕方ない、な」

「ええ、本当にごめんなさい…」


それなのに、クリスマスに約束を入れるなんて、ラピスらしくないと思えた。毎年、一緒だったのに。



たまに二人きりになって、キスをしようとしても、何度も避けられた。そういう雰囲気になっても、ラピスは「気分じゃないの」と謝る。

ラピスが好きだから、一緒の時間を過ごしたくて、俺はめげずに彼女に声をかける。しかし、ラピスは何かにつけて断るのが増えた。


ラピスに避けられているのか?
俺はラピスに何かをしたのだろうか?いくら考えても、した覚えはない。

それなら、どうして?ラピスに聞いても、答えてくれない。



「浮かない顔だね」

「え」


振り返ると、モモがいた。

モモ・ラブラドライト。
うちの親の秘書の子供で、小さい頃からの知り合いでもある。モモの見た目はおとなしそうに見えるが、実は明るくて、元気だ。物事も白黒ハッキリさせたい性格でもある。



「何でもない」

「あ。もしかして、ラピスラズリにクリスマスを断られたの?」

「……」

「やっぱり。顔に出ていたよ?アメジスト」


そんなに顔に出した覚えはないんだが。
だが、いつも俺が悲しかったり、寂しかったりする時は、必ずモモが声をかけてくるような気がした。

隠しても仕方ないか。俺はモモにラピスのことを話すことにした。



「ラピスの様子が最近、変なんだ」

「変?」

「ああ。デートに誘っても断られることが増えているんだ」

「え。じゃあ、あの噂は本当なのかな?」

「噂?」


モモが「しまった…」という顔をした。おそらく無意識に呟いていたのだろう。モモも顔に出やすいじゃないか。



「アメジスト。怒らないで聞いてね?」

「怒らないから、話してくれ。ラピスのこと、なんだろう?」

「うん。あのね、ラピスラズリ。特待生の男の子とよく一緒にいるって」

「特待生?ああ、一般の枠から入った学費が免除されるっていう…」

「そう。名前が確か、宝石の……ルビー!ルビー・マチェドニアっていったかな。かなり明るくて、神経が図太い男子って、聞いた!」


図太いか。確かに図太くなければ、この学園には入らないだろうな。しかし、その名前、セレストからも聞いたことがあるような気がする。

まさか、俺がいるとわかっていながら、ラピスに近づいてるんじゃないんだろうな。

一度、そいつを調べてみるか。


その時。



「シトリン様!」


近くで男の声がした。
声のした方に行ってみると、ドアが少し開いていた。

覗いてみると、薄暗い部屋に男と女がいて、女は俺の双子の妹であるシトリンで、ベッドの上に座っていた。男の方はシトリンの玩具の一人だろう。そいつがシトリンの足に縋る。だが、シトリンは鬱陶しいかのように男を蹴飛ばす。



「だーめっ。あなたは私のいうことをきかなかったでしょ?もう相手にはしないわ」

「シトリン様、何でもしますから!お願いします」

「何あれ…」


モモが信じられないという顔で、見ていた。
おそらくシトリンも俺とモモが見ていても、気にしていないのだろう。むしろ、見られる方が燃え上がるタイプだしな。

俺はモモの腕を取り、そこから離れた。



「アメジスト。シトリンと一緒にいた子達は何!?」


リビングに連れて来ると、モモは俺にそう聞いてきた。



「あれはシトリンの玩具だ。親がたまに金で買ってくるんだ。あいつの遊び相手としてな。飽きたら、捨てる。ゴミのようにな」

「ひどい…」


モモは比較的まともな思考だから、シトリンのやることに理解が出来ないと言った顔をしていた。

シトリンは元から普通ではないし、飽きやすいからな。今いる玩具も6人くらいだが、そのうちの2人には飽きているみたいだから、近いうちに捨てるだろう。

そういえば、その中の一人だけシトリンに従わないのがいたな。確か、ターコイズとか言ったか?シトリンは面白いって、笑っていたが。おそらく気にいる何かがあるから捨てないに違いない。



「アメジストは何とも思わないの?」

「思わない。興味もないからな」


モモは何か言いたそうにしたが、口にしなかった。



「モモ。シトリンの玩具には手を出すな。お前に何かがあったら大変だ」

「でも!」

「シトリンは自分の邪魔する人間に対して、容赦しない。お前に何かあったら、俺も心配なんだ。だから、あれは見なかったことにしてくれ」

「……わかった」


モモは素直にいうことを聞いてくれた。モモもシトリンの性格は知っている。

シトリンは男には大目にみるが、同性相手には容赦しない。前にもシトリンに男を取られたと騒いだ女がいたが、その女の体も心も相当傷つけて、病院送りにしたことがある。

他の女はどうでもいいが、モモをあんな目に遭わせたくはない。



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