別室


□元気のもと
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…眠いのに、何か音が鳴っている。
いつの間にかソファでうとうとしていたようだ。


ぴぃ〜んぽ〜ん、ぴぃ〜んぽ〜ん。



間延びした間抜けなチャイム音。
時計を見ると午前三時。

ドアを開ける。


「川島っ、」

息せき切った田村がそこに立っていた。愛おしさのあまり、抱きしめてしまいたい衝動に駆られる。
風呂上りで飛び出してきたのか、田村はちょっとホカホカしてる。
それが間抜けでかわいくて、心の中で悶絶する。

「なんか電話で落ち込んでるみたいやったから、心配なってさ、」


そんなんお前の声でとっくに癒されたよ。


「たむちゃん」

「ん?」

「ありがとう」

「……?何が?」

…こんだけのことをしてくれといて、自分では何のことすら分かってないとは…。
たぶん、考える前に体が動くんやろう。田村にとっては、落ち込んでる人がいたらそこに飛んでいくんは普通のことなんだと思う。



「たむちゃん、もう遅いし、今日は泊まっていって」

「ええの?」


単純に嬉しそうに笑う田村。告白されたというのに、そんなことなんも考えてないんやろうな…。

俺だって男なんですけど…。


「でも良かったわ」

田村がにこにこ笑う。

「何が?」

「川島、思ったより元気そうやったからさ、」



……ガマンも限界かもしれん。



思わず抱き寄せておでこにキスをする。

田村は驚いた顔はしたけど抵抗はしなかった。

「たむちゃん、」

「…ん」

「好きや」

「…それ、前にも聞いた」


色気のない返答だが、そんなことにはお構いなしにぎゅうぎゅうと田村を抱きしめる。
あほの田村はそれを俺が落ち込んでるせいやと理解したようで、背中を不器用にぽんぽんと撫でてくれる。
そのまま、田村を寝室に引きずり込みベッドに倒れこんだ。

「川島、元気出せって」

「…ん」

鈍さもここまでくればノーベル賞ものだと思う。
俺はなおも田村を後ろからを抱きしめた。


もっと田村を自分のものにしたい欲求に駆られる。でも、そうすることで田村を失うことの怖さのほうが勝った。

だから今は、


田村の誤解に乗じて、


田村を抱いて眠ろう。


「かぁしま、おやすみ」

「ん、おやすみ。たむちゃん愛してる」



暗い中でも田村が赤くなったのがわかった。





END
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