書籍

□告白
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…アカン。重症や。俺、どうかしてしもたんかもわからん。

福田が井上と肩を組んでる。石田が福ちゃんの肩を触った。
番組のノリでしてることわかってても、イライラしてまう。
あんなんただのスキンシップやし。俺でもあんなんするやん。

分かってる。分かってんねんけど、アカンねん。

福ちゃん、小杉のこと、コッスーって呼んでるし。宇治原のことは、うーじって呼んでるし。
俺のことは徳井としか呼んでくれへんのに。
昔は、とっくんとかよし君とかって呼んでくれとったのに。



俺、どうかしてる。


「徳井さん」

「うわあぁっ。…なんや、井上か」

「そんな驚かんでもええでしょ」

「いや、あんまりブサイクな顔やったから」

「…カメラ回ってない所でもいじります?」

「なんなん。なんか用事あったんとちゃうんか?」


「……ま、ええか。単刀直入に言いますけど、徳井さん、福田さんのこと好きでしょ?」


「なっ…え、えぇ?」


「見てたら分かりますって。鬼のような顔で石田のことを睨んでたし」


「…俺、そんな顔しとった?」


「かなり」

俺は大きくため息をついた。
壁に背中を付けて、そのままずるずると座り込む。


「俺、福田のことが好きなんかもわからん」


「あれ、無自覚だったんですか?」

心底意外そうな井上の声。

「僕は、けっこう前から徳井さんが福田さんのこと好きなん分かってましたけど」


そうなんか?けっこう前から俺は福ちゃんのこと、好きやったんか?
気付かへんかっただけで?

そうかも知れん、とは思う。
でもそれ以上に怖くなる。


だって、福ちゃんとは三十年近く、一緒にいるし、コンビ組んでからは仕事も一緒で、公私ともに俺の相方やったし、独り立ちしてからは正直家族よりも一緒にいる時間が長い。

もう、家族以上の絆があんねん。


その福ちゃんを俺は好きになってええのか?


もし、この気持ちが福ちゃんに邪魔やと思われたら、俺は永遠に福ちゃんを失ってしまうんやろか?
そんなん絶対にイヤや。

言われへん。
せっかく、俺は福ちゃんのことが好きやって気付けたけど、こんな気持ち絶対に伝えられへん。


「徳井さん、愛は言葉にしないと伝わりませんよ」


「っ〜〜〜。…お前、俺の頭の中、読んだか?」

「いや、なんとなくですけど。徳井さん顔に出やすいんで」

井上は、時々こんな風に勘がいい。

「大丈夫ですって。僕が見る分では福田さんも脈ありですよ?」


…ほんまに?それが、ほんまやったら、アカン。めちゃくちゃ嬉しい。


「ありがとう井上。ブサイクのお前に言われるんは腹たつけど、参考になったわ」


「一言よけいですって」


あ、向こうで石田と福ちゃんがじゃれてる。
邪魔しに行ったろ。




福ちゃん、大好きやで。






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