書籍

□誕生日
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「どないしょう…」


福田は悩んでいた。今日は徳井の誕生日。お祝いをしたい気持ちは十二分にある。
あるのだが。

「どうやって言うたらエエねん…」

今夜、家でパーティーしよ、の一言が照れ屋の福田にはどうしても言い出しにくいのであった。
家にはケーキや様々な料理の仕込みがしてある。あとは徳井を迎えるだけなのだが。


「福ちゃん、おはよぅ」

「あ、おはよ」

楽屋入りしてきた徳井。言うなら今を逃して時はない。
しかし、見事にそのタイミングを逃してしまった。

福田は内心頭を抱えるのであった。


収録中も、その事で頭がいっぱいになって一向に身が入らない福田。

「福ちゃん、どしてん?調子悪いんけ?」

何も知らない徳井はそんな福田を心底心配そうに、顔を覗き込んだ。

「そっ、そんなことないよ!!」

「ほんま?」

慌て否定する福田に、徳井は疑い深げに言う。
徳井は最近福田に対してえらく過保護だ。

「……。まぁ、熱はないみたいやけど」

「…………ッ!!」

無造作に伸びてきた、徳井の大きな手に額が覆われ、福田は絶句した。
顔が赤くなっていくのが自分でも分かった。

徳井と一緒にいるとほんまに心臓に悪い。


「ほんまに、調子悪いんやったら言うんやで?」

「わかった、わかったからっ」

なおもしつこく訊いてくる徳井を福田は振り切って、徳井と向き合う。

ここで言わんともう言う時がない。

「なぁ、徳井」

「なんや?」

「今日、うちに来てくれへん?」

珍しい福田からの誘いに、徳井は少し戸惑ったように黙りこみ、そして意味ありげににやりと笑った。

「…福ちゃん、それってもしかしてソッチのお誘い?」

「アホか!!ちゃうわ!!ありえへんし!!」

「もぉ、照れてからにぃ。かわええのぅ」

「照れてんとちゃう!もうええ。来んでええ。勝手にしぃ」

半ば本気で怒りだした福田に徳井はあわてて機嫌を取る。

「ちょ、ちょぉ待ってぇや。そんな怒らんでも…」


その時、楽屋の扉が開いた。

「徳井さん、お届けものですー」

入ってきたのはマネージャーさん。

「あれ、ケンカですか?」

二人のギクシャクした空気に戸惑い気味のマネージャー。

「いや、ちゃうけど。それで、俺に届けもんてなん?」

「ああ、ファンの子からのプレゼントです。今日、徳井さんの誕生日ですからね」

マネージャーは徳井に一抱えもあるプレゼントの山を渡すと、まだ用事があるので、と出て行ってしまった。

「そーいや今日俺の誕生日やん。……あ、」

徳井はその時何かに気づいたように動きを止めた。
手にいっぱい持っていたプレゼントの山を放り出し、徳井は福田に抱きついた。

「そういうことかぁ。福ちゃん、ちゃんと言わな、分からんやろ?」

「なっ。楽屋で抱きつくんやめろっ」

「ふくの匂いがするぅ」

「なに甘えてんねん!!」

徳井は福田の抵抗など、歯牙にもかけず、徳井はさらに強く福田を抱きしめた。

「ふく、俺の誕生日パーティーしてくれんねんな?ありがとう」

そんな徳井からの素直な言葉に、福田はかなり、ぐらっときた。

「徳井」

「ん?」

腕の中でおとなしくなった福田の頬を手の甲で撫で、徳井はその感触を楽しむのに夢中だ。

「生まれてきてくれてありがとうな」


徳井が鼻血を吹いたことは言うまでもない。



end


オマケ
福ちゃんのうちにて

徳「さて、飯も食ったし、プレゼントタイムやな」

福「え、そんなん準備してへんよ?料理作んので忙しかったから」

徳「大丈夫。俺へのプレゼントは福ちゃん自身…――」

福「いっぺん死んでくるか?」




徳井さん、誕生日おめでとう。
ツンデレな福ちゃんが好きです。なんか、まとまりのない話になりましたが。
楽しんでいただけたら幸いです。

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