書籍

□言葉
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「なぁ」

収録の合間、ロケバスの中で、福ちゃんが俺の服の袖をひいてきた。
いつになく甘えたような態度に、驚きを感じながらも、喜びは隠せない。

「どないしたん?」

そう尋ねれば、自分の行動を恥じたように顔を赤らめて、なんもない、と俯いてしまう。

「どないしてんホンマに。よけ気になるやん」

そう言って笑うと、福ちゃんは困ったように、眉を寄せた。

「なぁ、」

「なにぃ」

「……俺のこと好き?」

一瞬、その言葉の意味を図りかねて、黙り込んでしまう。
だって、あんまりにも福ちゃんらしからぬ発言だったから。

「好きに決まってるやん。なに?不安になってるん?」

安心させるように笑えば、それに応えるように福は微笑んだ。

「アホやねん俺」

そう言って顔を真っ赤にしている福ちゃんはほんまに可愛かった。
さっきのロケが美女ロケやったから、少しだけ落ち込んでんねやろと思う。
自分からは絶対言わんけど。

俺は福の目をまっすぐ見た。

「なぁ、福。俺がほんまに好きなんはお前だけやねんで」


「…………。なあ、お前そういうこと言うて恥ずかしないん?」


「だってホンマのことやもん」

俺が自信満々で言うと、福は少し呆れたように笑った。


「アホやなぁ…お前。けど…」

福ちゃんはそこで言葉をいったん切って俯き加減になった。

「なに?」

俺がじれて、その続きを促すと、福は耳まで真っ赤になった。

「…ちょっとだけ、嬉しかったで」

俺は、いつもよりちょっとだけ素直な可愛い福ちゃんを、正面から抱きしめた。
福ちゃんはほとんど抵抗せず俺に体重を預けてくる。
そのことが嬉しくて、俺は腕に力を込めた。

「徳井、徳井っ。痛いって!」

力が強すぎたのか、福ちゃんから悲鳴が上がった。

慌てて体を離すと、顔を紅潮させた福ちゃんがいた。

「ごめん福ちゃん」

「エエねん。謝るなんてらしくないなぁ」

そう言って笑った福ちゃんの顔は俺が今まで付き合ってきた、どんな女よりも可愛かった。

俺は知らず知らずのうちに、福に引きつけられるように近づいていった。
唇と唇が触れる間際、俺は福の吐息を感じた。
福の吐いた息を俺が吸ってると思うと、自分が興奮していくのが分かった。

「とくい…」

福ちゃんが俺の名前を囁く声が俺の鼓膜を震わせて、身の内が震えるような心地がした。

もう、ほんまにキスする寸前やってん。

「兄さん、お待たせしましたー。やっと終わって…ってあれ、なにやってんすか?」

入ってきたイモトに俺ら二人ははじかれたように、離れざるをえなかった。

俺は見られても別によかってんけど、福ちゃんは嫌がるからな。


車内に漂うぎくしゃくとした空気。
それから一番に逃げ出したんは意外なことに福ちゃんやった。

「…あ、じゃあ俺スタッフさんとこ行ってくるわ」

そそくさと車内から逃げ出した福ちゃん。
あとに残されたんはイモトと俺。

せっかく福ちゃんとちゅーをするチャンスやったというのに。

「……イモト。お前、覚えとけよ」

「兄さん、目が怖いっ!なんなんすか。え、?マジでなんかしました?っていうか、顔こわっ!え?マジで?」

イモトは完全にプチパニックや。
けど、獲物に目前で逃げられてもうた俺の気持ちには、全然釣り合わん。

俺のこの高ぶった感情をどうしてくれんねん。

しゃーないから、妄想の中で福ちゃんを犯したんねん。


なあ、福ちゃん。福ちゃんが照れ屋なのは知ってるけど、時々はこうやって、言葉で自分の気持ち、ちゃんと伝え合おな。
俺も一生福ちゃんに、『好き』って言い続けるから。

だから、たまには福ちゃんからも俺に『好き』って言ってな。

福、愛してんで。





最近、スランプです。
いつもに増しての駄文…。
ここまでお付き合いくださり、ありがとうございました。

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