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□あのさ
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「なあ 志々尾」 
「・・・・・・・?」
俺が真剣な声色で声をかけたからか、志々尾は心配したのか、眉をひそめた。
「話があるんだ・・・・」
「・・・どうした」 
「俺・・・・・」 
  ゴクリ・・・
志々尾の喉が動くのが分かった。
「俺、女だったんだ・・・・。」
「は・・・・・?」
すっとんきょうな声を出す志々尾に、俺は思わず吹き出してしまう。
そんな俺を見て、志々尾の眉の間のしわがさっきよりも、深くなる。
「なに言ってんだよ。」
「あれ?信じてない?」
「当り前だろうが」
「え〜〜〜。じゃ、ちょっとまってな。」
 う〜ん と悩みだす俺の姿に、志々尾は困惑しているようだ。
そんな志々尾の様子を楽しみながらこれからどうしようか、考える。
「あっ」
急に声を張り上げた俺に、志々尾はビクッと、はねた。
「影宮って実は、女なんだ。」
そう言うと、志々尾は一瞬固まってから、あきれたように声を出す。
「バカか・・・・・?」
「でもさあ 一瞬ドキッ としただろ?」
そう言うと、志々尾は 目をそらした、そんな志々尾の様子をかわいいなあ と 笑った。  
夜行で一緒に暮らしていたのだから、影宮が男ということを知っているはずなのに。
「なんなんだよ。さっきから。」
少し苛立ったように言う志々尾に、笑うのをやめて、「まだわかんねえの?」と言う。
「?」
「エイプリルフール」
「・・・・・・・・くだらねえ・・・。」
「なんだとー!」
「顔が笑ってるぞ」
志々尾に言われて、両手で顔を触ってみると、笑っていた。
「気づいてなかったのかよ・・・」
「うっせ」 
「バカだな」
「んだとー!!」
叫ぶと、志々尾は 眉間のしわをより深くさせ、
「うるさい」
と、苛立ちの混ざった声色でいった。
         やば・・・・・
怒らせた    それが 体から動きを奪った。
どうしよう  どうしよう  どうしよう
 「あ・・・・・・・・・・・・」
謝ろうと とっさに出した声は、ひどくかすれていて それが間抜けに感じられる。 
「          ごめん」
今度は ちゃんと     いや さっきよりはましな声を出すことができた。
顔の筋肉がひきつるのを感じながら、必死で笑おうとする。
  ちゃんと笑えているだろうか・・・・
志々尾が今どんな顔をしているのか、 
怖くて 顔があげられない
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