◆TREASURES
□ORANGER なおさま VD小説
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タッタッタッタ…
廊下を軽快にパタパタと走り、目的の部屋に着く。
浮き足立つ足音はいつもより軽やかに廊下に響いた。
走ったせいで、ほんのりと温まっている手はひんやりとするドアノブをギュッと掴み、一気に開け…
バーンッ!
今にも開けようとしていたドアは、わたしが開ける前に勢いよく開かれ…
ガバッと何かに抱きつかれ、何事かと目をパチパチさせる。
「楓ーっ!俺様に会いに来たんだなっ!!」
「た、高杉さんっ」
甘い匂いにつられたのか、抱きつきながら首元でクンクンと顔を擦り付けてくる。
「ちょっ…」
「楓さん、晋作が嫌なら、はっきりきっぱり嫌と言っていいんだよ」
高杉さんの背後から、サラリと言ってのける。
「き、今日の桂さん怖いっス…」
「で、どうしたんじゃ?」
龍馬さんの冷静な一言で、やっと本題に戻り、高杉さんからようやく解放され、生徒会室のみんなに向き直った。
「えへへ〜っ、ハッピーバレンタインですっ!」
今日は2月14日。
世間は甘い香りが漂って、甘い話も漂う日なのだ。
後ろに隠し持っていた紙袋から沢山の包みを、パッと出す。
もちろん、これは義理だけど…
「…毒入りか」
「い、以蔵君!姉さんに失礼っスよっ!!」
「そうですよ岡田さん。入ってるとしても、土方さんの分だけでしょう」
「あぁっ?!…てめぇ!」
「ちょっとっ!なんで毒入りの方向で話が進んでるんですかっ!!」
毒入りの方向で勝手に進む話に、ちょっとムッとする。
いくら義理チョコとは言え、そんなことするわけがないっ!
「大丈夫、以蔵は照れてるだけですから」
「た、武市先生何をっ…」
顔を真っ赤にして否定しても、全く説得力のない以蔵に、大久保さんが含み笑いをする。
「モテない男はつらいものだな」
腕を組んで、あからさまに見下したような物言い。
よくもまあ言えたもんだ、と思うが、大久保さんはモテるから食って掛かれない。
「あれ?…さっき女生徒に追いかけられて……」
おかしいな、というように桂さんは首を傾げている。
「以蔵は意外とモテちょるからの…にししっ」
「うるさいっ」
バタバタし始めた生徒会室で、みんなに義理チョコを渡して回った。
……うーん…。
今は、渡せないよね。
いつ渡そう…
校門で→2P
帰り道で→3P
屋上で→4P
廊下で→5P
教室で→6P
階段で→7P
校舎裏で→8P
自宅で→9P(R15)
生徒会室で→10P(R15)
あとがき→11P
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