短編
□追いかけれない
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*
「白石ぃ。千歳、今日も学校来てないでぇ」
はぁ…と溜め息をつく。
放浪癖があるのは分かっている。
しかし今はいつもより酷い。1ヶ月ほど顔を見ていない。
「千歳…大丈夫なん?最近全然見いひんけど…」
「…あいつやったら大丈夫やろ」
そういう白石も元気がない。
電話をしても繋がらない。家にも行ったが誰もいない。
「千歳ぇ…」
*
次の日、千歳のいるクラスを白石は見に行った。
いつもなら迷惑だと思う女子も今日は視界にも入らなかった。
「おい、千歳来てへんか?」
千歳と同じクラスの男子に聞いてみた。
「さあ…見てへんなあ…」
返事はやはり“分からない”
「あいつ…どこ行ったんやろ…」
白石が呟いたとき、
――ピーンポーンパーンポーン――
放送がなった。
『3年白石。3年白石。今すぐ教官室まで来なさい。3年白石……………』
*
「失礼しまっす」
ガラガラっとドアを開け、白石は教官室に入った。
白石は見た。
先生たち3人ほどに囲まれたその人物を
「…千歳!」
千歳は優しく微笑む。
「白石」
誰がみても寂しそうな笑顔。
「千歳、千歳、何でそんなとこに…」
「静かにしろ」
教師たちの鋭い視線。
「何が…何があったんですか、先生!」
「すまんたい、白石。俺、」
千歳が白石の目をはっきり見る。
「退学、ばいね」
*
ここはどこだ。
あの後自分は、どうなったんだ。
何も分からない。
だが、三文字の言葉が頭に回る
“ち と せ”
白石は慌てて職員室前の掲示板を見に行った。
一枚の白い紙が貼ってあった。
『退学』
その下を読んで行く。
『千歳千里』
自分の足が震えていくのが分かった。
『退学理由』
『校内での暴力、並びに相手への傷害』
白石は崩れ落ちた。
*
1ヶ月前―――――
千歳は白石と約束をしていた。
どうしても、守らなければならない、約束を―――
千歳は急いでいた。いつもは急ぐことなどない千歳でも、この時は。
「おい」
声をかけられた。
振り向くと、3人の金髪の男。
手には―――――
「その指輪…!」
千歳の指にも同じ指輪。
いつだったか、2人で買った指輪。
「白石とかいうやつ?あいつなら今ごろホテルじゃねーのっ?」
意味が分からなかった。
「俺らのダチがさあ、学校一のイケメンと一発ヤりたいっつうからさ、ちょっくら借りた」
金髪三人組の服装は、今千歳が着ているものと一緒。
四天宝寺の制服。
「心配するなって、3人ぐらいで順番にいれて出してるだけだからよ。まあイくまで帰さないと思うがよ。要するに3回イくっつうことだな」
「あいつぼこられても叫んでたぜ」
「千歳、って」
*
気づいたら―
教官室だった
目の前には警察と先生達。それに包帯をぐるぐる巻きにした3人の男。
千歳は理解した。
怪我をさせてしまったんだ。
あの後のことを警察に聞いた。
白石は保護されたらしい。奇妙な薬とやらを飲まされて昨夜のことは記憶にはないらしい。
「千歳に悪気がないことは分かっている。―――が、」
教師が口を挟んだ。
「相手をきづつけた事には変わらない。しかも千歳は授業の出席日数は足りてない。ここは目をつぶるところだが、今回の事件の事もある。よって」
「停学、だ」
*
千歳が白石に退学、と告げて1週間がたった。
白石はあれから、千歳を見ていない。
だが、白石はもう決心した。
千歳のことは、心の中で、応援し続ける。
なぜかって?それは千歳が手紙をくれたから。
手紙をもらって3日ぐらいはそりゃもう、なき続けた。
だけどもう大丈夫
*
白石へ
ごめん。いきなり行ってしもうたばい。
前から思うとったばい。いつかは、別れようと。
ばってん、白石んことが好きで好きで、別れようなんてこと忘れとった。
いつかは別れなだめばい。
俺は熊本に帰るた。
でもいつか、まだ白石が俺んこと好きやったら。
そん時は迎えにいくばい。
千歳
追いかけれない
(でも大丈夫)(いつかまた会える気がするから)
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