短編

□追いかけれない
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「白石ぃ。千歳、今日も学校来てないでぇ」



はぁ…と溜め息をつく。
放浪癖があるのは分かっている。
しかし今はいつもより酷い。1ヶ月ほど顔を見ていない。


「千歳…大丈夫なん?最近全然見いひんけど…」

「…あいつやったら大丈夫やろ」


そういう白石も元気がない。
電話をしても繋がらない。家にも行ったが誰もいない。


「千歳ぇ…」






次の日、千歳のいるクラスを白石は見に行った。
いつもなら迷惑だと思う女子も今日は視界にも入らなかった。


「おい、千歳来てへんか?」
千歳と同じクラスの男子に聞いてみた。
「さあ…見てへんなあ…」


返事はやはり“分からない”



「あいつ…どこ行ったんやろ…」


白石が呟いたとき、


――ピーンポーンパーンポーン――


放送がなった。




『3年白石。3年白石。今すぐ教官室まで来なさい。3年白石……………』







「失礼しまっす」
ガラガラっとドアを開け、白石は教官室に入った。



白石は見た。
先生たち3人ほどに囲まれたその人物を



「…千歳!」



千歳は優しく微笑む。
「白石」

誰がみても寂しそうな笑顔。



「千歳、千歳、何でそんなとこに…」

「静かにしろ」



教師たちの鋭い視線。

「何が…何があったんですか、先生!」



「すまんたい、白石。俺、」




千歳が白石の目をはっきり見る。



「退学、ばいね」










ここはどこだ。



あの後自分は、どうなったんだ。




何も分からない。
だが、三文字の言葉が頭に回る


“ち と せ”




白石は慌てて職員室前の掲示板を見に行った。



一枚の白い紙が貼ってあった。



『退学』



その下を読んで行く。



『千歳千里』




自分の足が震えていくのが分かった。



『退学理由』













『校内での暴力、並びに相手への傷害』






白石は崩れ落ちた。






1ヶ月前―――――



千歳は白石と約束をしていた。
どうしても、守らなければならない、約束を―――



千歳は急いでいた。いつもは急ぐことなどない千歳でも、この時は。




「おい」
声をかけられた。

振り向くと、3人の金髪の男。
手には―――――


「その指輪…!」



千歳の指にも同じ指輪。
いつだったか、2人で買った指輪。

「白石とかいうやつ?あいつなら今ごろホテルじゃねーのっ?」


意味が分からなかった。


「俺らのダチがさあ、学校一のイケメンと一発ヤりたいっつうからさ、ちょっくら借りた」


金髪三人組の服装は、今千歳が着ているものと一緒。
四天宝寺の制服。



「心配するなって、3人ぐらいで順番にいれて出してるだけだからよ。まあイくまで帰さないと思うがよ。要するに3回イくっつうことだな」




「あいつぼこられても叫んでたぜ」








「千歳、って」






気づいたら―




教官室だった




目の前には警察と先生達。それに包帯をぐるぐる巻きにした3人の男。

千歳は理解した。
怪我をさせてしまったんだ。



あの後のことを警察に聞いた。
白石は保護されたらしい。奇妙な薬とやらを飲まされて昨夜のことは記憶にはないらしい。




「千歳に悪気がないことは分かっている。―――が、」

教師が口を挟んだ。

「相手をきづつけた事には変わらない。しかも千歳は授業の出席日数は足りてない。ここは目をつぶるところだが、今回の事件の事もある。よって」





「停学、だ」









千歳が白石に退学、と告げて1週間がたった。
白石はあれから、千歳を見ていない。
だが、白石はもう決心した。

千歳のことは、心の中で、応援し続ける。
なぜかって?それは千歳が手紙をくれたから。


手紙をもらって3日ぐらいはそりゃもう、なき続けた。
だけどもう大丈夫










白石へ
ごめん。いきなり行ってしもうたばい。
前から思うとったばい。いつかは、別れようと。
ばってん、白石んことが好きで好きで、別れようなんてこと忘れとった。
いつかは別れなだめばい。
俺は熊本に帰るた。
でもいつか、まだ白石が俺んこと好きやったら。
そん時は迎えにいくばい。
千歳



追いかけれない
(でも大丈夫)(いつかまた会える気がするから)


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