『花』小説2
□猫の恩返しC
4ページ/4ページ
食後、テレビを見ながら酒瓶を開けていると、今日に限って何故か人間の姿で幸村がリビングにやって来た。もじもじ、入りにくそうにしている幸村に、椅子を引いてスペースを開けてやる。
「Come on?」
「…あの、」
「来いって言ってる。なんだよ」
許しを貰った幸村は政宗の側に歩みより、せっく空けた椅子ではなくぺたり、足元に座ってしまった。太腿にコツン、頭を乗せてくる幸村は仕草が猫の儘で。最初は戸惑っていた政宗も、一緒に生活をし始めてそれなりに時間も経った。いい加減慣れてきたようである(多少感情の乱れはあるが)。
「…あの、今日来ていた人の中に」
おずおず、幸村が政宗を見上げる。どきり。上目遣いで、縋るような眼差しを向けてくる幸村に政宗は若干胸が高鳴るのを感じた(それでもリアクションを取らなくなったのは進歩だ)。
「さすけ…佐助という人が…?」
「ああ。それがどうした、」
幸村の口から「佐助」という単語が出てきた事に、政宗はあまり驚かなかった。幸村は奥の部屋にいたとは言え、同じ室内。何かの拍子に名前が聞こえたのだろうと思っていた。けれど。
「……あの人、猫なんです」
幸村が言い、政宗はほんの僅かにではあるが思考を止める。
(…佐助が…猫…?)
漸く幸村の発言を理解して、俯いてしまった幸村を見下ろした。
「Ah?」
「佐助は、猫でござる」
「…、」
「某と一緒の、猫で」
「Wait!…お前と一緒って事は」
人の姿をした猫って事か…?自由自在に人や猫に変われる?普段一緒に飲んだり遊んだりしている「人間」が、「猫」って事か?…冗談だろう。政宗は思ったが、実際、その冗談を具現化した男…幸村が目の前にいる。
「…お願いです…もう少しでいい…、某を、某をもう少しここに置いてください…」
そう言って涙目になった幸村を、政宗は全く理解できずに途方に暮れた。
政宗は知らなかった。否、知っているはずもない。人間に姿を変えて生活する「猫」の、秘かな決まり事と「真実」をー…
To be connteinue.