『花』小説2
□ありふれた人生E
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佐助の後について屋上の扉を開けば、案の定騒がしい2人が転校生を玩具に騒ぎ遊んでいた。元就は何事も無かったかのように弁当を広げ、埃を避けるように離れた位置で卵焼きを頬張っている。
佐助が屋上の冷たいタイルを踏むと、元親と政宗にもみくちゃにされていた幸村(みたいな顔の男の子)がはっとしたように視線を向けた。
「あ…!あの!だ、大丈夫でござるか…?何かご気分でも、」
二人から離れ、慶次の前に立つ佐助に歩み寄る。佐助の背中が僅かに震えた。
やるせない。彼の仕草は「真田幸村」そのものだった。ただ、その他人行儀な振る舞いを除いて。
「こっちこそごめん、俺、急に気分が悪くなって」
「そうでござったか!あいすみませぬ、某はどうも鈍感で気付きませんでした」
困った風に笑う幸村に、佐助の背中が震える。絞り出す涙もなく、ただ、堪えきれない切なさで震え、傷ついているのだろう。
嗚呼、背後から思い切り抱き締めて、そのままこの場から連れ出してしまいたい。
「佐助が貧弱なんて俺は知らなかったな、」
「どーせ徹夜でゲームでもしたんだろ〜」
「…俺様、そんな不健康な事しません!アンタらと違って」
佐助は態とらしく鬱陶しい声を出して舌を出し、幸村(っぽい誰か)を促して冷たいタイルに腰を下ろした。手に持っているのはいつもメロンパンだ。
佐助は無理をしている。いつもいつも、元気振りをして遊んで、何気なく毎日を過ごしている振りをしている。俺はそれを見ているのが辛かった。俺ならそんな辛い思いさせないのに、側にいるのに、抱き締めてやれるのに。
俺だったら、
『佐助を覚えているのに』