『花』小説2

□ありふれた人生F
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あの人はいつも紅を背負っていた。

共に在るというよりも、それはむしろこびり付いて離れないような。


芳しい匂いさえしていたように思う。

敵味方構わず響く罵声、悲鳴、うめき声。

刃が鋭い音を紡ぎ、槍や弓が濁った空気を切り裂いていく。

俺は常に黒ずんだ視界から彼を見ていた。

薙ぎ払い倒れる群像には目もくれず、彼の背だけを追いかけ、あるいは遠くに気配だけを感じて。

けれども必ず、あの人は俺を見つけ出すのだ。

「――」と、名前を呼びながら。

手を。




『…佐助、』





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