『花』小説2

□始まりの詩
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Episode3:あの人に彼女がいない理由





「あっれ、佐助どしたん?めっちゃやつれてない?」



まるで二日酔いした早朝の様な酷い気分だった。這うように出社したけど、腰と頭と喉の異様な痛さに目眩がする。

成実の大きな声がその全てによくしみた。



「…っ、ちょっと、成実さんもう少し小さな声で喋って…」

「え、声もがっらがらじゃん。何で?風でも引いた?」

「違うよ」

「そういや昨晩片倉さんと仕事するって帰らなかったっけ。そんな辛い仕事だった「部長の名前を出すな!!!!!」



思い切りデスクを叩いてしまって、成実どころか周囲の視線が一斉に俺様に向いた。何でも無いとその場を振り切ってトイレに駆け込み、膝を抱えて洋式の便座に座る。

じんじんと痺れる下半身が、紛れることの無い思考回路を組み立てていた。



『ちょ…っ、し、仕事って…!!』

『家で仕事か?お前は聡明な奴かと思っていたが、案外そうでも無かったか』

『はあぁ?つうか押し倒すな!ば、ばっかじゃないの!?』



何とも…3流ドラマのような展開。

単刀直入に言うと、俺様「お持ち帰り」されちゃいました。

朝気が付くと机にメモが置いてあって「出張が入った。朝飯は冷蔵庫から適当に出して食え」そう、何でもない風に書いてあるのみ。

(俺女の子ともした事無いのに!!それを…っそれをおおおお!!!)

思いだして悶絶、しかしすぐにお尻の激痛に驚いて動作を止めた。



「ちくしょ…っ!俺様が男に掘られるなんて…!掘られるなんてえええ…っ」



あの人に彼女ができない理由。

それは部長…否、あいつが「ゲイ」だったからだ…!!






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