『花』小説2
□始まりの詩
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Episode2:お持ち帰り
奢りという所為もあって、集まった十数人はやいのやいので盛大に騒いで沢山飲んだ。
「さ、さす…っう、」
「わーーー!!!ちょっと旦那ぁ、ここで吐かないの!トイレトイレっ」
俺様はそんなに飲まなかったし、弱い訳でもなかったからあちこちで潰れている社員達の世話に忙しかった。
まあ俺様は世話を焼くのは嫌いじゃないから、別に気にはしてなかったんだけど。
少し落ち着いて、もう少しでお開き…そんな時間だった。片倉さんが、俺の隣に座ったのは。
「猿飛、この後時間あるか?」
「え?あ、はい。家に帰るだけなんで」
「政宗様から仕事の話が入ってな…人手が欲しいんだが、生憎この様子だと…」
「…はあ、確かに」
べろべろに酔っぱらった社員達の中に、今更仕事に戻れそうな輩はおらず。俺も戻りたい訳じゃないしできれば帰って寝たかったけど、上司の言うことを無下にできる訳もないよね。素面だし。
俺で良ければと快諾すると、そう間もなくして飲み会はお開きとなった。
旦那(俺様の同期の友人)が気になったけど、慶次が一緒に帰ってくれるというので任せた。小十郎さんに促され一緒にタクシーに乗ると、車は滑りよく夜の商店街を走り出す。
…ふと、景色が馴染みのものでは無いことに気が付いた。
(あれ…会社って反対方向じゃ無いっけ…??)
不思議に思って片倉さんを見ると、部長が予想以上に素面の顔で驚いてしまった(結構お酒飲んでたと思うんだけど)
「…え、あの。片倉さん、会社で仕事するんじゃないんですか?」
もしかすると、出先で何か失敗でもあったんじゃ…。
そう思って緊張したけど、片倉さんは何やら軽く頷くだけで内容を応えてくれる訳でも無い。
数分経って辿り着いたのは、何とも立派な高層マンションビル街だった。そのうちの一つにタクシーが止まり、部長と二人生温い外気に放り出される。
「ここ、どこですか?」
「俺の家がある」
「へ?仕事、片倉部長の家でやるんですか、」
俺は驚いた。でも、俺は全く「他の疑問」を持たなかった。だってそれもそう、片倉部長に、まさか「仕事以外の何か」を含ませているかなんて、気付くはず無いじゃないか。
「何、すぐ終わるさ…」
先に歩き始めた部長に続いて、俺はその後にひょこひょこ金魚の糞のようについていったー…。