『花』小説2
□初恋K
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夜にも関わらず、必要以上にきらめくホテルの前に黒塗りの車が停車した。その中から、対称的な色彩の「白い男」がぬるり、滑り出てくる。
「天海さまあ〜!!!!」
「おや、金吾さん」
入り口のゲートをくぐった所で、駆け寄ってきた「子供」を天海と呼ばれた男は難なく受け止めて見せた。子供は鼻水と涙でぐしゃぐしゃになった顔で高そうな白いスーツに顔を埋めている。
「一体何処に行ってたんだよお、僕を置いていくなんて!」
「すみません金吾さん…少し、暇つぶしを…」
「ひまつぶし?」
「ええ。少々、川上りをする鯉を摘んで参りました」
「??」
ぐずる子供…金吾の手を取って、エレベーターに乗り込む。
「未だ本格的に狩るには成長期ではないようで。本当の暇つぶしになってしまい残念です」
「…鯉を狩るの?」
「はい金吾さん、今暫くお待ち頂ければ、一緒に竜を狩りに行けるかもしれませんよ」
「わあ!それは楽しみだね天海さん!!それで、今日は何をして遊ぶ!?」
「そうですねえ…」
チン、最上階についてから、白い男とまるで成長期の「止まった」子供は広すぎる室内へと吸い込まれていった。