『花』小説2

□初恋G
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「乗れよ。送る」

「はい!」



夜になって、佐助達が未だ遊んでいる中政宗が幸村だけに声をかけた。朝練に出る幸村の朝は早く、なるべく早く帰って夜は寝ないと身体が保たない。最初は「それ」がきっかけだった。政宗は仲間の中で唯一幸村だけを家に送っていくようになり、遊ぶ度にそれを繰り返す内政宗のバイクに幸村は当然の様に乗せて貰えるようになった。

女だけは天変地異が起きても乗せない。そう認識されていただけに、政宗のバイクに女が…という事実は衝撃的だったのだろう。

仲間内の見解はどうかと言えば「時間の問題」なのだとかどうとか。

それほど、二人の中は急速に縮まっていた。けれど当たり前な日常が、とても貴重で稀なことであると、政宗はともかく幸村にはあまり伝わっていないのが勿体ないようにも思える。



「ありがとうございました!伊達殿」



家の前でバイクから降り、幸村は満面の笑みを政宗に向けた。政宗が僅かに目を細める仕草をした後僅かに視線を逸らす。幸村は最近気付いたのだが、政宗は気を許した相手とはあまり視線を合わせない。慶次や元親と話している際に発見し、以来幸村の秘密のときめきになっていた。嫌われているのかとそわそわしていた時期もあったが、事実が分かった今では彼とこうして二人で話すのが楽しみでしようがなくなった。

政宗が好きな幸村はには尚更。彼が自分を仲間として認めてくれたのが心底嬉しい。



「佐助に、なるべく早く戻るよう伝えてくだされ」

「…あの猿が俺の言うことを聞くとでも?」

「大丈夫でござる!佐助は世に言う…あれです、つんでれ…とか言うものらしいので」

「慶次か、」

「はい。佐助はつんでれだよね〜っておっしゃっていました」

「Hum…それはそれで、気持ちが悪い」



政宗が舌を出して不快そうな顔をするのに、幸村が声を立てて笑う。

胸がどきどきと煩い。政宗がかっこよくて、好きすぎて心臓が痛い。毎回沸騰しそうな感情を幸村は抑え付けている訳で。

幸村はこれ以上の発展を望んでいるようで、実はこのままの関係を続けてもいいと思っていた。恋だの愛だのと言った言葉を紡ぐ思考はあるが、今一実感が薄かったと言っても良い。

遊んで話して、こうやって送ってもらったりたまに二人きりになったり。

告白なんてしなくても、仲良く楽しく、彼の側にいられたらそれで良いのではないかと。




「Good night.」

「はい、おやすみなさいませ伊達殿」



走り去る政宗に、幸村は大きく手を振って。







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