『花』小説2
□初恋G
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「おらどうした、今日はえらく動きが鈍ってるな」
「まだまだでござる!いやあッ!」
「…おっと」
道場で竹刀を振り回す男女が一組。放課後、剣道部では最早「名物」となりつつあるチャンバラ(そうにしか見えない)が披露されていた。
防具無しで竹刀のみを持ち、幸村と政宗が思う存分試合うというもの。剣道と名の付く練習では二人も大人しく防具を身につけ竹刀を振るっていたが、どうもこの二人の組み合わせになるとチャンバラのような自由気ままな試合(というよりも遊んでいるようにも見える)をしたくなるようだった。どうして誰も止めないのかと言えば、二人が遊んでいるように見えて、実際の所物凄く強かったからだ。防具を一切身につけず勝負をして、一度たりとも互いの身体を傷つけた事はない。刃と刃のぶつかり合い。少しでも外せば致命傷という紙一重の試合、緊張感たっぷりに窺う部員が殆どだった。
そしてもう一つ二人が知らない秘かな理由。それは二人が「付き合っている」という噂が流れていたからだ。仲睦まじく戯れているカップルに横やりを入れる事が出来る部員などいない。というか、怖くてできない。
「おーい!そろそろにしなよ二人とも。ご飯食べるんでしょ〜」
「政宗〜行くよ〜」
さて、そんな二人に横やりを入れられる勇者と言えば佐助と慶次。さながらお母さんと弟と言ったところだろうか(幸村は佐助の言うことなら何でも聞くし、政宗は慶次の言うことを断ることができない)。二人に呼ばれて漸くチャンバラに区切りをつけた幸村と政宗は、着替えた後合流し、部活後定番のお遊びへと出かけた。
メンバーには元就と元親が加わって、集団でわいわいするには最適(らしい)ファミレスへと赴く。季節は夏、このメンバーで集まり遊ぶ事は、既に当たり前の事になっていた。
「俺は…オムライスがいいな」
「じゃあ俺様煮込みうどん」
「Ah…じじくせえ」
「は?お前全国の煮込みうどんファンに謝れ」
「佐助と政宗って些細な事ですぐ喧嘩するよね…幸ちゃんはどうするの?」
「私はハンバーグとオムライス!」
「えっふたつも…」
「Oh…」
「旦那は良く食べるからね」
「「(きっとその胸にはいるんだろうな…)」」
「我はスープパスタ」
「あ…スープパスタ…」
「オムライスと半分にするか?」
「はい!わあい」
「…女子同士っていいなあ」
「……確かに」
こうやって集まってご飯を食べたり、たまに佐助の手料理をみんなで食べたり(たかるに近い)。ゲームセンターやバッティングセンター、お買い物、プリクラ、とにかく学生の思いつく全ての遊びは網羅していたのではないだろうか。
そんな中、政宗と幸村が「付き合っている」と噂が流れたのは何故か。