『花』小説2
□ありふれた人生H
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よく、赤い夢を見る。
…否、それが赤なのか、本当の事はよく分からない。
ただ、そんな気がする。目を覚ますと、赤の残像がずっと目の前をちらつく朝があるから。
よくみる夢の内容は、覚えていない。
…否、内容があったのかどうかも定かではない。
けれど、こびり付いた赤い色と一緒に、どこか懐かしいような、切ないような、悲しい鳴き声のような。
誰かの、声が響いているような…そんな気がする。
不思議な夢を見る。
だがそれは些細な疑問で、布団から抜け出せば掻き消える、儚い夢の残像だった。