神南→かなで


星が瞬く。
夏も終わりを告げる、そんな夜。

「諦めましたよ」

ぼんやりと土岐が紡ぐのは、彼が嫌いな都々逸。
この気持ちが分からない、そう言っていたが。

「お前は早々に戦線離脱か?」

「ちゃうわ、これは宣戦布告や」

東金の言葉に土岐は薄く笑った。
とても楽しそうに。
珍しい、そう思った。
どちらかと言うと傍観者であり、物事に関わろうとしない彼が。

「なら、どう諦めた?」

「諦めきれぬと諦めた」

届かない星に手をのばし、彼は詠った。
諦めきれないと詠う。
恋に身を焦がす蛍にはなりたくないと思っていたのに。

「珍しいな、蓬生」

「俺自身びっくりや」

悪戯に笑う土岐の姿に、厄介な奴が敵に回ったと内心でひっそりと溜め息を吐いた。

「まぁ、お前との勝負はあいつを神戸まで連れて行ってからだな」

「姫の傍には手強いナイトたちがおるで?」

土岐の言葉に思い出すのは星奏のアンサンブルメンバー。
何時も守るように、彼女の傍にいる。
だが、と東金は口の端を釣り上げ笑った。

「“knight”如きが“king”に勝てると?」

そう言う彼の言葉には力があった。
王者。
そう言っても過言ではないほどに。

「キングって自分で言う?」

東金のそれに土岐は肩をすくめて見せるが、彼の唇も微笑みの形を作っていた。

「せやけど、俺も負けへんから」

この勝負は始まったばかり。


諦めきれぬとめた

(ところで、蓬生)
(なんや?)
(何でお前は“蓬生さん”で俺は“東金さん”なんだ?)



都々逸の一つ
「諦めましたよ どう諦めた 諦めきれぬと諦めた」より

これ、好きなんです




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