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□隔靴掻痒
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※アニメ51話「LOVE&LUCKY」を元にしてます。
『仲間』だなんて。
都合のいい言葉を使って。逃げて。
この胸の痛みを。
認めたくなかったのは。
実らない。と、知っていたから。
◆隔靴掻痒(かっかそうよう)◆
(グレイ→ルーシィ)
「最近、誰かに見られてる気がするんだよね〜」
「こういうのを“自意識過剰”って言うんだよねー、ナツ!」
「そんなんじゃないー!!」
いつも通りの騒ぎ声が響くギルドの一角。
カウンターで座っていても、その会話が丸聞こえな程。
相変わらず五月蝿い赤い髪と青い猫と。
星霊魔導士の、彼女。
“気のせいならいいんだけど…”
ルーシィがう〜ん、と首を捻る。
ナツとハッピーは笑ってる、けど。
―…何お気楽な事言ってんだよっ。
帰るルーシィの後姿を、無言で睨む。
隣のジュビアから不機嫌そうなオーラが漂ってきてるが。
あえて気付かないフリをして、ぎりっと唇を噛み締めた。
彼女…ルーシィが、闇ギルドに拉致された事は。
そんなに古い話じゃない。
あの時は無事に救出できて。
依頼者は彼女の父親で。
大騒動になる事もなく、事なきを得た、けど。
(ギルド全壊が大騒動ではない訳ではないが…)
ルーシィが、「ハートフィリア」のお嬢様だという事に変わりはなくて。
それを知る存在は、当然ながら他にもいて。
ここにいるから大丈夫という保証は何もないのに。
彼女の“ボディーガード”であるべき、ナツは。
「明日の昼、集合な!!」
…そんな事、微塵も思っていないだろう。
俺なら、そんなヘマしない。
俺が、いつも彼女の隣にいられたら。
俺が、彼女のパートナーであれば。
そう願っても、無意味だと分かっているのに。
願わずにはいられない。
彼女をココへ連れてきたのは、ナツ。
そして、初めて会った時すでに彼女は。
彼女の視線は。
滅竜魔導士にしか、向けられていなくて。
“やっぱり仲いいわよね〜、あの2人”なんて。
にこにこ笑顔のミラの言葉が、胸に刺さる。
“おぉ”なんて。
思ってもいない言葉を口にするだけで、精一杯、だ。
俺は。
「グレイ様…?」
彼女の傍にいる資格がなくても。
見守るぐらいは、させて欲しいから。
「どちらへ行かれるのですか!?」
背中から追いかけてくるジュビアの声を無視して。
ルーシィの帰り道を先回りすべく、駆け出した。
もし、彼女が危ない目に遭っていたら。
『俺が』助けて。
そのまま、彼女の部屋まで送ろう。
そして、あんな頼りない相棒なんか見限って。
俺と一緒に仕事しようって。
もしかしたら。
ほんの少しでも。
こっちを向いてくれるなら。
きっと、俺は―………。
「ナツ〜、ルーシィ遅いね」
「おぉ。少し戻ってみるか?」
「でも、行き違いになっちゃうかもしれないよ?」
「うーん、じゃ待つか!」
彼女の部屋に着く直前になって。
一番聞きたくなかった声が、聞こえた。
「…くそ…っ!!」
とっさに、物陰に身を潜めたものの。
抑え切れなかった怒りに、ドンッ、と船底を殴りつけた。
今回だけは、アイツよりも近くにいられると思ったのに。
どこまでもどこまでもどこまでも。
邪魔する赤い髪。
初めてルーシィに会った時から。
いつも、いつも、いつも。
彼女の隣にいて。
彼女の瞳の中にちらちらと写って。
彼女の心を、独り占めして。
まるで亡霊みたいに張り付いて離れない。
「…あ〜ぁ…」
俺の僅かな野望も潰えたり、か。
もうここに用事はないのに。
立ち去る事さえできない自分が、笑えてきて。
ごろんと船底に寝転がった。
帰ってきた彼女が、ナツたちの姿を見たら。
きっと、笑顔を浮かべるのだろう。
俺が一番見たくないような笑顔で。
これ以上ないような、幸せそうな顔で。
俺以外に向けられたそんな笑顔なんか。
絶対に見たくないけど。
でも、君が無事に帰宅するまで。
心配で帰れないから。
もう少しだけ、ここで待とう。
俺の胸の痛みと引き換えに。
君の無事が確認できるならそれでいいから。
「俺ってば、いい奴じゃん?」
この姿に彼女が気付いてくれたらいいのに、なんて思いながら。
そっと小さく囁いた。
■意 味: 靴を隔てて痒い所をかくように、思うようにならなくて非常にもどかしいという意味。
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2010.11.08
溜めていたアニメを一気に見て、51話でやられました。(笑)
グレイ、堂々とルーシィらぶを公言してます!男前です!
グレイがギルドで気にしてて部屋まで来るところが直感でビビッと。
やっぱりグレイは男前。うみゅ。