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□和敬清寂
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ふわふわり。
空を漂う白い綿。
誰の元へと舞い降りる?
◆和敬清寂 (わけいせいじゃく)◆
(ロキ×ルーシィ)
「う〜、もう風が冷たい季節になってきたわねぇ」
ぶるり、と体を震わせ、ルーシィが呟いた。
“最近めっきり夕闇が迫る時間が早くなった”と隣へぼやく。
「そうだね」
そうにっこり笑うのは、当然のように彼女の隣を歩く彼女の星霊。
全身を黒いスーツで覆い、一見近寄りがたい雰囲気を身に纏ってはいるが。
顔に浮かべる柔らかな表情が、その気配を一掃する。
彼女とロキが仕事を終えた帰り道。
森を抜けるこの道は、もうそろそろ薄暗くなり始めていた。
「早く帰らないと、ルーシィ風邪引いちゃうね」
「そうね〜…、うー寒いっ!」
「何なら僕が温めて…」
「いらない」
「えー、そんな冷たい事言わずに」
へろへろと笑うロキを、じろりと一喝。
「…強制閉門されたい?」
「あははー」
抱き締めようと伸ばしていた手を慌てて引っ込めるロキ。
それを見て、やれやれとルーシィは笑う。
ふわり。
その目の前を突然通り過ぎた、白くて小さいモノ。
「え?雪!?」
「いけない!やっぱり、僕が温めて…」
「帰すわよ」
「冗談です」
ふわり。
今度は、その白いものが、上へと上る。
「…えっ」
ロキが、そっと手を伸ばして掴まえた。
その小さな小さな白い綿。
「雪虫だね」
全長5mmほどの小さな虫。
お尻に小さな綿毛を付けた、冬の到来を告げる使者。
「もうそんな季節なのね」
「そうだねぇ」
「早く帰らないと、ホントに風邪引いちゃうわ」
「だから、僕が温めてあげるって」
「セクハラ星霊」
「セ…っ、ルーシィってば酷いっ」
「あーはいはい。強制閉も…」
「やめてーっ」
ふわり、ふわり。
雪虫が儚く漂う。
もう、初雪が近い季節。
「さぁ、早く帰りましょ」
ルーシィは、隣へと手を差し伸べた。
にっこりと笑うロキを、横目に見ながら。
ふわふわり。
そらを漂う白い御使い。
誰の元へと舞い降りた?
■意 味:穏やかで、慎み深く静かで落ち着いていること。
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2010.10.24
季節感ぶっ飛ばしー。(笑)
最近のあまりの寒さに思いついたネタ。
私の地元では「雪んこ」もしくは「綿虫」と呼んでますが。
あの小さな綿毛を見ると、なぜだか暖かい気持ちになれますね。
…あぁっ、メルヘンだぁっ!!←今気付くか