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□暗闘反目
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◆暗闘反目(あんとうはんもく)◆
(ナツ、グレイ、ロキ→ルーシィ)
「グーレーイィィっ!」
「ナツゥゥっ!」
酒場のイスやらテーブルやらが飛び交う中。
「相変わらず派手にやってるわねぇ…」
それを平然と見守るのは、ルーシィ。
もちろん、巻き込まれないように離れた場所から、だが。
いつもいつも。
気が付けば、取っ組み合いの喧嘩をしている2人。
炎と氷の属性だから、相性が悪いのはどうしようもないとは思うが…。
「同じチームの者同士、たまには仲良くできないのかしらねぇ…」
カラン、と飲んでいたグラスの中で氷を揺らす。
ある意味、見飽きた光景。
もうさして興味も湧かない。
「さーて、今日は帰って小説の続きでも書こうかな」
カタンとイスから立ち上がったその時を見計らったように。
「じゃ、僕が部屋まで送るよ」
頭上から声が降ってくると同時に、肩に回された手。
「…ロキ。一体あんたはどこから…」
にこにこ笑顔でぴったりと張り付くロキ…もとい、獅子宮の星霊、レオ。
「私、呼んでないわよね?また勝手にゲートをくぐって!」
星霊王に怒られても知らないんだからね!…と言ったところで、ルーシィの非難はどこ吹く風。
「さぁ、危ないから送ってあげるよ」
「いらない」
「そんな事言わずに」
「あんたが一番危険なのよ」
「やだなぁ〜、こんなに誠実に君だけを愛しているのに?」
「あー…、はいはい。それはどうも」
どれだけ邪険にされようと、そこは女の扱いに慣れているロキ。
挫けずめげず、ルーシィの肩を掴んで離さず。
そのままギルドの出入り口へ誘導しようとする。
「きゃっ!?」
そこへ飛来した、ひとつの物体。
「…君たち、喧嘩は外でやったらどうだい?」
横を向いたまま、易々と自分目掛けて飛んできたイスを捕らえる。
ちっ、と聞こえた舌打ちは、ナツのものかグレイのものか。
「もし彼女に当てたりなんかしたら…」
―影も形も残らないぐらい、木っ端微塵にしてあげるよ?2人共。
笑顔の背後に見えるどす黒い気配に、一瞬後ずさるルーシィ。
その空気を知ってか知らずか。
「うるせぇ!」「黙ってろ!!」
見事なまでに揃う罵声に、やれやれと肩をすくめる。
「仕方がない子達だ…。ちょっと待っててね、ルーシィ」
にっこり笑うと、1歩ずつ2人のもとへと歩みだすロキ。
その手が光りだすのを確認すると、ため息と共にルーシィはひとりギルドを後にした。
みんな、本当に子供なんだから。と。
呟くルーシィ。
ギルドに残された3人の想いになんて、気付かない。
実は彼女が一番子供なんだけれど。
―何であんなにも喧嘩したいのか、私には分からないわ。
3人の想いが彼女に届く日は…遠い。
■意 味:互いに敵意を表面に現さないで争うこと。ひそかににらみあうこと。
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2010.10.14
日常をテーマに。
想われている事に気付かないルーシィに、実は影で争奪戦をしている3人。
最初のナツとグレイの喧嘩の理由も実はルーシィだという…。
知らぬが仏。