お題<book> 1

□一歩を踏み出す勇気
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ギルドを飛び出し、その勢いのまま次の角を曲がる。

わざと足を滑らせた反動で砂埃が舞い上がる。が、お構いなし。

今はとにかく。




「待ちなさいっ!ナツ!!」

「〜〜〜っ!」



後ろから追いかけてくるルーシィの。

その鬼のような気迫から逃れるのが、最優先だ。





※一歩をみ出す勇気※





「あ〜〜〜…っ!」



河原に座り込み、ぜーぜーと荒い呼吸を繰り返す。

必死に逃げたせいで、肺はかなりの酸素不足。

持久力と忍耐力には自信があるのに。

相手がルーシィとなると…、なぜか限界が近いような気がする。



「ったく、何でオレが逃げなきゃいけねーんだ」

誰に言うでもなく、ひとりぶつぶつと川面へ愚痴る。



あの一件があってからというもの。

ルーシィにどんな顔して会ったらいいのか分からず。

街角で遭遇しては、逃げ。

ギルドで会っては、逃げ。



“逃げる”なんでいうのはガラじゃないのに。

ルーシィにだけは、刃向かえない。



“アノ”事に関しては。

少しは、悪い、と。思ってるんだけど。

それを正面切って“ごめん”と言うのは。

どう考えても。



「〜〜〜っ、恥ずかし過ぎるっ!!」



だって。

ルーシィと顔合わせて。

『キスしてごめん』って言うのか?

『悪気はなかった』とでも言うのか?

有り得ない。

絶対に無理!!



「どうしたらいいんだよ〜…」



なぜあんな事をしたのか、と聞かれても。

自分でも理由が分からない。



それに、そもそも。

例えばはっきりした理由があるとしても。

謝れば、許してもらえるのだろうか。

突然キスするなんて。

殺されても文句は言えない。



このまま逃げて謝らなかったら。

そのうち、うやむやにできるのだろうか。

いつになるか分からないけど。



傷付いたであろうルーシィを。

知らないふりして。



―…それは、駄目だ。



ルーシィを傷付けたと知っていて。

謝らないなんて。

チームなのに。

大切な、仲間なのに。



―…仲間…?



一瞬だけ、妙な違和感を覚えて首を傾げる。

ルーシィは、一緒に仕事する仲間だ。

それは絶対に間違いないのに。

なぜ違和感を感じる必要があるのだろうか。



…わかんねぇ。



とにかく。

大切なヒトであるのは、間違いないのだ。

その相手を傷付けたままで、逃げて。

胸にもやもやを抱えたままで一緒にいるなんて。

そんな器用な事は、オレにはできない。



何言われるか。

恐いけど。



許してもらえるのか。

不安だけど。



逃げてるばかりなのは、癪に合わない。

だから。正面からぶつかるしかない。



「…よしっ!!」


掛け声一発。

よっと起き上がると、ルーシィの部屋目指して駆け出した。

********************

2010.11.16

短っ!ナツ切り替え早過ぎですね;;

ナツが恋愛感情を意識するのは無理でした。

一歩踏み出す勇気って…謝る為の勇気になっちゃってます;;

進展しないなぁ、この2人。

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