お題<book> 1

□好きかも、しれない
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「そんなんじゃないってば〜」

ミラと笑い合いながら、ルーシィがぱたぱたと手を振る。

ひらひらと動くその手。

今見ていても、何も感じないのに。



―…何で、あんなにどきどきしたんだろ?





きかも、しれない※




ルーシィに連れ出されたあの日以来。

正直言って、あの手が気になって仕方がない。

何て事ない普通の手だと思うのに。

あの手の感触を思い出す度にどきどきして。

何だか妙に落ち着かない。



「何でかなぁ〜…」



机に突っ伏したまま、ルーシィの手をじーっと見続ける。

どちらかといえば身振りが多いルーシィの手は。

会話の途中で握ったり、開いたり。

色々とその表情を変えている。



でも、何も感じない。



「おかしいなぁ〜…」

あのどきどきの意味が分からない。

何度考えても。

どれだけ見ていても。



うー、と頭を抱えて考えて考えて。



「よっ、お帰りルーシィ」

「何であんたは私の部屋で当然のようにくつろいでんのよ!」

考えるのを諦めて、直接確かめる事にした。



「ルーシィに頼みがあってさ」



“頼みぃ?”と露骨に嫌そうな表情を浮かべるルーシィ。

それにお構いなしに近寄って。

手首を掴んで持ち上げる。



「ちょ、ちょっと!」



ルーシィの抗議も無視して。

前とか後ろとか横とか向きを変えて。

じーっと間近に見てみるが。

やっぱり、何も感じない。



こうなったら。



「なぁ、ルーシィ。手、繋いでもいいか?」

「はぁ!?何で!」



あのどきどきが何だったのか。

確かめるには、これしかない。

気になる事は確かめないと気が済まない。

そういう質なんだから、仕方ないだろ。



「いいから、手」

“ほれ”と手を差し出すと。



「ばっ、なんでこんなとこで…っ」



またもや真っ赤になりはじめたルーシィ。

その顔を見ているのも面白いが。

今はそれよりも、気になる事を片付けたい。



「いいから、手、繋げよ」

「いやよっ!」

「なんで」

「なんではこっちのセリフよっ」

「少しだけでいいからさー」

「あんたはさっさと帰りなさいっ」

「手、繋ぐまでは帰らないっ」



う〜、と睨み合いをすること、しばし。



「少しだけだからねっ」

“すぐ帰ってよ!”…という言葉と共に、その手が差し出された。



「わかってんよ」

そっと、その手を掴んで。

この間のように、指をルーシィのソレの間に差し入れた。

日頃あまり触ることがないルーシィの手。

野郎とは違う、女の子の手。



―…やっぱ、柔らけぇ…。



先日はびっくりしてすぐ手を離してしまったが。

改めて握り締めると、ふよふよした感触がとても心地よい。

しかも、ルーシィの手はすべすべで。

指の腹で撫で回していると、手全体が気持ちいい事に気付く。



指を組み替え、離してはまた絡めて。

何度も何度も手を差し入れては、抜く。



抜く時に擦れる感触も、すごく気持ちが良くて。

そんな感覚がとても不思議で。

気が付けば。



「ちょ、ちょっと、近いっ!」



ルーシィの体に触れそうな距離まで、近付いていた。

顔を上げれば、目と鼻の先にルーシィの顔。

正面に見えるのは、ぷっくりとした唇。



―…アレも、柔らかいんだろうか。



ふとわいた疑問に、空いている手でそっと触れた。

ぴくっ、と揺れるルーシィの体。

輪郭にそって撫でると、やっぱり柔らかくて。



「…ん…っ!やっ!」



どん、と突き飛ばされて。

我に返った。



「ナツのバカっ!帰ってよ!!」



背中をどんっ!と叩かれて、そのまま部屋から追い出されて。

バタンと閉まったドアの外。

何が起きたのか分からず、呆然と立ち尽くした。



手で触れた、ルーシィの柔らかい唇。

そして、オレの唇に残るこの柔らかい感触は。



「…マジで?」



思わず手で唇を覆いながら、今頃どきどきしてきた胸を押さえる。



自分がルーシィにキスをしたという事実が。

ぐるぐると頭の中を駆け巡っていた。

********************

2010.11.12

にぶちんナツさんの、キス強奪事件。(ぇ

感情に素直な分だけ後先考えないからタチ悪そうな。

自分の気持ちにはまだ気付いてません。

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