お題<book> 1

□行かないで
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「いつにも増して騒々しいな、あそこは」

そう言いつつ、グレイがギルドの一角を指す。

もぉ〜いやだ。ロキったらぁ〜…なんて言葉が聞こえて来るが。

「放っておけばいいのよ!あんなヤツ!」

想像するだけでムカムカする。

“ソレ”を見る気にもならず、カウンターに拳を叩きつけた。



―…私に対する当てつけ!?



「おーい…、大丈夫か?」

顔を覗き込もうとするグレイを、じろりと睨みつけた。




※行かないで / 君と離れたくなかったこと




「ったく、何やってんだよ。お前らは」

グレイが呆れた様子で隣に座る。



なんで勝手に座るのよ。

正直、今は放っておいて欲しいのに!



「…別になにもしてないわよ」

「じゃ、何であんな“ハーレム”やってんだよ、アイツは」

「知らないっ!」

飲みかけのジュースを一気に煽る。

氷が溶けて温くなったジュースは、甘いはずなのに味がしない。

「ミラさん、お代わりっ!」

カウンターでミラが少し苦笑いしながら、用意する為に奥へと消える。

本当は飲み過ぎでお腹がたぷたぷしてるけど、今は何かしていないと落ち着かない。



「こんなところでヤキモチ妬いてるぐらいなら、直接言えばいいだろ」

「ヤキモチなんか妬いてない!」

「じゃ、何でそんなカリカリしてんだよ」

「私が何でイライラしてても勝手でしょ!?」

やれやれ、とグレイが上体を反らした。



昨日、悪いことしたから謝ろうと思って。

今日はどんなに恥ずかしくてもロキのところへ行こうと一大決心までして。

どきどきしながらギルドに来たのに。

途中で引き返そうと思うほど緊張しながら来たのにっ。



―…あの、あんぽんたんっ!



ギルドに足を一歩踏み入れた瞬間に、決心は見事に吹っ飛んだ。

見たくないものを見せつけられて。

当てつけみたいに周りに女をはべらせてっ!



「もう知らないんだからっ!」



出てきたばかりのジュースを、ガッと一気飲みした。



「うっ、げほげほっ!」

しまった。変なところに入った…っ。



「ほらみろ。落ち着けって」

グレイが背中をとんとんとさすってくれる。

無骨っぽいその手が何だか優しく感じるのは、弱ってるせいなのか。

「ありが…」とう、と言おうとして。



「随分、仲良しさんなんだね。2人共」



突然、頭上から降ってきたロキの声に驚いた。



「よぉ、ロキ。ハーレムはどうした」

「グレイ。人聞き悪い事言わないでよ。彼女達が離してくれないだけさ」

「そういうのをハーレムって言うんじゃねぇのか…」



“やだねぇ、そんな野暮な表現”…なんて笑い声。

私は、顔を上げる事さえできなくて。

じっと、両手を膝の上で握り締めた。



ごめんねって、謝るんでしょ。

ありがとうって、お礼言うんでしょ。

今言うチャンスなんだから。

言わなきゃ。

早く!



「さて、僕はこのジュースを彼女達へお届けに…」



ミラから受け取った複数のグラスを手に。

ロキがくるりと身を翻した。



「…ルーシィ…?」



ぴん、と引っ張られたロキのジャケットの裾。



「え……あ…っ、ご、ごめんっ」



思わず掴んでいたらしいソレを。

慌ててパッと離した。



「じゃ、邪魔してごめんねっ。早く行って…っ」



ロキにくるりと背中を見せる。

今は顔を見られたくない。

多分、…涙目になってる、から。



「おい、ロキ。耳かせよ」

「何だい?グレイ」

「いいから貸せって」



―…数秒後。



「…分かったよ」

ロキの声質が、レオのそれへと変化したのが分かった。



「何言ったの?グレイ」

「あー…まぁ、秘密」

“お帰りロキ〜”なんて彼女達の金切り声が聞こえてきてから。

背中を向けていた体を元へと戻す。

隣には、コキコキと肩を慣らす仕草をするグレイ。

“さーて、無事に済むかな〜”なんて。

少しだけ不穏な気配を隠したような言葉。



―…“ロキ”が“レオ”として答えるなんて、どういう事!?



にやりと笑うグレイに。

私は頭を抱えるばかりだった。

********************

2010.11.07

ロキとレオの書き分けは、

星霊とバレる前と同じ行動⇒ロキ。

バレた後の星霊としての姿⇒レオ。

としてます。分かりにくくてすみません。

私はレオがらぶです。はい。

あぁ、でもロキも好きーーーー!

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