お題<book> 1
□ごめん
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ん〜、と軽く背伸びをする。
集中して小説を書いていると、肩が凝る。
でもそれに比例して少しずつ、確実に増えていく束。
その山を見るのがとても好きだ。
※ごめん / 君に謝りたかったこと※
時計が示すのは、寝る時間が近い時刻。
「もうこんな時間なんだ」
今日書いた分をざっと読み返しながら、くぅ、と鳴ったお腹をさする。
―…そういえば、まだご飯を食べていなかった。
書いていると、ついつい食べるのを忘れてしまう。
これを仕舞ったら、何か軽く作って食べよう。
その後、洗い物を片付けて。
洗濯物は…今日はもうたたんだから、良し。
ぱらぱらと枚数を数え、とんとんと揃え引き出しへ仕舞う。
ふと後ろを見ると。
テーブルの上に置かれた、サンドイッチと紅茶が目に付いた。
こんな事をするのは。
「レオ、用意してくれたんだ…」
紅茶が置かれているということは、少なくともお湯を沸かす音ぐらいはしてたはずだ。
それさえ気付かないほど集中していたのか。
カップを取ると、ひやりと冷たさが手に伝わる。
完全に冷えきった紅茶。
一体、いつ煎れられたのだろう。
“ルーシィ〜”
猫なで声で甘えてきたレオが頭をよぎる。
背後から抱きつかれた時には、すでに用意されていたのか。
だとしたら、レオはいつからこの部屋に来ていたんだろう。
「レオ…」
“少しだけ話しない?”
そう笑っていた。
そういえば、もうどれぐらい話をしていないだろうか。
もちろん、ギルドで会えばみんなと一緒に会話に混じる事はあるけど。
私が常に一緒にいるのは、ナツやグレイやエルザ達。
チームだから何となく、…なんて言い訳。
正直言えば、みんなの前で2人で話すのは何だか恥ずかしくて。
(全員に“そういう間柄”だとバレてるから)
それに、“ロキ”も今まで通りの姿勢を崩してはいない。
誰にでも優しいフェミニスト。
全員と手を切って!…と言えば、多分そうするだろう。
でも、それが言えない自分がいて。
腹が立つぐらい、歯がゆい。
部屋に来てくれたレオを嬉しく思うのに。
邪険に扱うのは、ただの八つ当たり。
「分かっては、いるんだけどね…」
レオの優しさも。
私をとても大切にしてくれている事も。
素直に受け止めたいのに。
どこかで、その言葉を疑っている。
どこかで、裏切られる事を恐れている。
天の邪鬼な私。
“相手してくれないと、泣くよ?”
そう言った時も、笑っていたけれど。
本当は、きっと。
「あー…」
こつん、と拳で頭を叩く。
きっとまた、レオを傷つけてしまったのだろう。
分かっているのに。
「ごめんね、レオ…」
もうそこに姿がない彼に向けて、小さく呟いた。
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2010.11.06
人からの愛に臆病なルーシィたん。
父親のせいでトラウマになってそうだなぁ、と。