お題<book> 1
□さびしい
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いつも、いつも、考える。
“僕”は、彼女にとって、どんな存在なのだろうか。
※さびしい / 君にそばにいて欲しかったこと※
「ルーシィ〜」
彼女の背後からいきなり、がばっと抱きつく。
途端、びくうっと跳ねる背中。
「…っ、レオ!」
じろり、と睨まれ、にっこり笑い返す。
手元には、書きかけの小説らしき紙の束。
「もーっ!またアンタは勝手に出てきて!」
「だって、ルーシィ全然呼んでくれないから」
「アンタは魔力大きすぎるから、私の負担が大きいのよ!」
これぐらいの時間帯は、必ずひとりで机に向かってるハズだから。
自分の魔力で、ゲートをくぐってきた。
読みは正解。
彼女は今、部屋にひとり。
「まったく。何度言ったら分かるのよ、アンタは」
机に向かっていた体を反転させ、僕の方を向く。
僕と話をする為に体を向けただけ。
ただそれだけの事なのに、とても嬉しく感じてしまう。
僕は何て“重症”なんだろうか―…。
「今、集中してるんだから邪魔しないで」
彼女が小説を書くことに心血注いでいる事は知ってるけど。
「えー、少し話ししない?せっかく来たんだし」
ソレよりも、“今”目の前にいる僕を見て欲しくて。
「相手してくれないと、泣くよ?」
少しだけ、本音を混ぜる。
“またアンタは馬鹿な事ばかり言って!”…なんて。
ルーシィが怒る事は予想してた通りだけど。
やっぱり、…ちょっと、胸が痛い。
「もう、続き書きたいんだから早く帰ってね!」
くるりと反転した背中。
もう彼女の視界に僕は入れない。
ねぇ、今、君の頭の中に。
その心の中に。
―…僕はいますか?
手を伸ばせば届く距離にいるのに。
触れる事ができなくて。
その心を知るすべも、なくて。
いっそ、声に出して叫べたら、楽になるのか。
散々考えたけど。
僕は喘ぐ事しかできない。
「…レオ?」
ゲートをくぐる瞬間。
背後から彼女の声が聞こえた気がしたけれど。
僕は、振り返れなかった。
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2010.11.05
レオの胸中告白からスタートです。
レオって長生きしてる分だけ、色々な事を抱えてそうで伏線張るのは楽で良い。