お題<book> 1

□怒らせてみたくて、
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「ナァアアツゥゥゥ!!」

「やべっ、ルーシィが怒った!逃げろハッピー!!」

「あぃ!」

あはははは、という周りからの笑い声の声援を受けながら、ギルドの中を走り回る彼女。

くるくると良く変化するその表情は、とても豊かで。

見ている者の心を和ませる。

怒った顔も可愛いなぁ〜、なんて考えててふと思考が止まる。



僕の命は、あと僅か。



僕は彼女の、僕に対して“怒った顔”を見ることはない。

ちくっ、と何かが胸に刺さった。




※怒らせてみたくて、※
<きみにイタズラ、番外編>





「ちょっとロキ…今日はどうしたの?」

「んー?何のことー?」

「何って…。何でこんな状態なのかなーって思うじゃない。普通」

床の上に膝を抱えて座るルーシィに、それを背後から抱き締める僕。

いくらルーシィの部屋の中だからとはいえ、こういうシチュエーションは、まず、ない。

「別に何でもないよー?ただ何となくねー…」

再度、ルーシィを抱き締めた両腕に力を込める。

ルーシィは問いただすのを諦めたように、小さく息を吐くとコツンと僕の肩に頭を乗せてきた。

とくん、とくん、とくん…。

耳に当たるルーシィの首筋から伝わる、血の流れ。

確かにココに君と僕が生きているという証。



「言いたい事は、口にして伝えなきゃ駄目よ?」



見つめてくるその瞳はとても心配そうで。

僕は自分の我が儘を知る。



「…ねぇルーシィ、ちょっとお願いしてもいいかなぁ」

「?なぁに?」

「僕の事、怒ってくれる?」

「へ?」

「それこそ思いっきり。がつーんと」

ね?と笑うと、眉間に見事な皺を寄せたルーシィ。

「…何か拾い喰いでもした?」

僕の額に手を当てて、熱を計るような仕草をする。

「熱はないようね…」

「僕は普通だよ?」

「…普通の人は怒られたいなんて思わないと思うけど」

「星霊だからかな?」

「そんな事を言ってるんじゃないんだけど」

「あはははー」

やっぱり駄目か〜なんて笑ってみるけど、ルーシィは誤魔化されてくれなかった。

「ロキ」

じっと見つめられてしまえば、降参するしかない。



「ちょっと、羨ましくて。ね」

「羨ましい?何が」

「みんなが」



ルーシィがナツに連れられて初めてギルドに来た頃。

僕は、星霊として命が尽きる寸前で。

星霊である事がバレないように、君の事を避け続けた。

泣いて笑って怒って。

みんなと楽しそうに騒ぐ姿を見ながら。

そんな君を遠くから見つめ続けるしかなかった。

ギルドのみんなが過ごした君との時間。

僕には足りない君との時間。



今更、取り返せないと分かってはいるんだけど。



「小さい男でごめんね?」

くすくすと笑う。

ちょっと、自虐的な笑いになったかもしれない。



「…ロキのばーか」



えいっ、という呟きとともに落とされた。

「って」

見事なでこピン。

と同時に、するりと腕の中から逃げてしまうルーシィ。



「ねぇ、ロキ」

「なぁに?」



目前に仁王立ちのルーシィ。

表情が…こ、怖い。



「ロキの馬鹿っ!あんたが最初に逃げ回るからいけないんでしょう!?

 星霊魔導士だからってなに!?私は私なんだから!

 星霊だって最初から打ち明ければ良かったんじゃない!

 消えるつもりだったとか、そんなのただのアンタの我が儘でしょう!?

 傍にいたいと思っていたのなら、最初からどんな事してでも足掻きなさい!

 私と一緒に生きたいと悪足掻きしなさいよ!

 そんな事すらしないで、自分だけ除け者みたいに拗ねる資格はあんたにはナシ!!」

「…はぃ、ごもっともで」

「それに!!」

すうっ、と息を吸い込むルーシィ。



「こんな私を知ってるのは、ロキだけなんだからねっ!!」



腰に手を当てて仁王立ちの彼女が全身に纏うのは、たった1枚のバスタオル。

ナゼかと問われれば…まぁ、言わずとも知れたところで。

「…そうだね」

自分の発言が恥ずかしくなったのか、顔を赤らめてぷいっと顔を逸らしてしまうルーシィの腕を引き、抱き締める。

「僕にしか、見せちゃ駄目だよ?」

「ロキにしか見せてないわよ」

ぷうっ、と頬を膨らますその顔が可愛くて。



「ルーシィ、大好きだよ」



そっとキスを落とした。



ねぇ、過ぎてしまった時間は取り戻せないけど。

これからの時間は、僕だけの為に。

本当の君の姿は、僕だけの為に。



お願いだよ?









「…あっ!!」

唐突に、何かを思い出したと同時にしまったという表情をするルーシィ。

どうしたのかと先を促せば。

「…ごめん、ハッピーとプルーはお風呂に一緒に入った事あるんだけどー…」

それも駄目…かな?と上目遣いに見られて。

もうこれからは絶対に駄目だからね、と念を押す。




後日、青い猫(?)と子犬(?)がとてつもない恐怖を味わったとか何だとか。





********************

2010.10.15

あーれー?でぇきてる゙ぅぅう。

予定外だ。(笑)

タイトルと内容が遠すぎると思いつつ、最後には何とかタイトル通りになってホッとしました…。

ロキはやっぱり腹黒です。

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