お題<book> 1
□無意識にこの手は、
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“デートの最中で、不在でして…”
バルゴの言葉が重く圧し掛かる。
星霊界で、レオが、“デート”。
“誰と?”って聞きたいのなら、呼び出して直接聞けばいいだけの話。
でも、鍵を握った手は、一向に動いてくれない。
※無意識にこの手は、※
どんっ!
「あぁぁ、もうあのすかぽんたん星霊がっ!!」
乱暴にテーブルに置いたカップから、淹れたばかりの紅茶が零れる。
お気に入りのテーブルクロスが汚れた事に気付いたが、今はどうでも良い。
「なぁーにが、“僕は何があっても君を守る”よっ!いちゃいちゃする方が大切なくせに!!」
レオの力を借りたくて呼び出したのに。
呼ばれて来たのは、処女宮のバルゴ。
レオと同じ<黄道十二門>であるだけあって、無事に仕事は片付いたものの…。
自分のデートを優先して、他の星霊をよこすなんて。
「ふざけるのもいい加減にしなさいよっ!」
仕事を終えてマスターに報告してからも。
自分の部屋へ戻ってからも。
イライラが治まらなくて。
どうにか気を落ち着かせようと紅茶を淹れたものの…全く効果はないようだ。
このままうだうだしてても、埒が明かない。
ここは当の本人を呼び出して、文句ひとつでも言ってスッキリさせるしかないっ!
鍵の束の中から、金色の鍵を握る。
「開け、獅子宮の…」
振り上げた先で、腕が止まった。
―…また、“デート”していたら?
―…オーナーである私よりも大切な“デート”中に呼び出されたら、レオはどう思う?
カクン、と、力なく腕が落ちる。
今は戦闘中ではない。
レオは星霊界にいて、自分の世界で自分の為に過ごしている。
それをただ単に『むしゃくしゃするから』呼び出しても許されるのか?
…自信がない。
鍵をそっとテーブルへと戻す。
「あーーーー、もうっ!!」
頭を両手でぐしゃぐしゃに掻き混ぜながら、天井を仰いだ。
どうしてこんなにもイライラするんだろう。
テーブルの上の鍵を見つめる。
室内の照明が当たって、キラリと光るその金色の鍵は。
気高い彼の姿そのものを表しているかのように、美しくて。
指先で、コツンと軽く弾いた。
「…レオのばか」
途端に、ふんわりと部屋の中に白色の光が溢れ出す。
「ルーシィ」
「レオ?」
ゲートをくぐって出てきたのは、金色の獅子。
その双眸に揺らめくのは何の想いか。
「僕の気持ちを、聞いてくれないかな?」
言葉はいつものように軽く、でもその重さはその比ではなく。
「ルーシィに、伝えたい事があるんだ」
レオは、ふわりと、笑った。
この想いよ、君に届け。
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2010.10.14
『気づいて欲しいから、』がレオSideなら、こちらはルーシィSideという事で。
本当はもっと鍵を気にしてうにうにする予定だったのに…。
ルーシィはやっぱり難しい。