お題<book> 1
□気づいて欲しいから、
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「開け、獅子宮の扉、レオ!!」
「お呼びでございますか、お嬢様」
「…って、バルゴ!?レオはどうしたのよ、レオは!」
「申し訳ございません、只今デートの最中で不在でして…」
「でぇぇとぉぉおおおお!?」
―君のピンチにはいつでも駆けつけるからとか言っておいて、あのすかぽんたん!!
※気づいて欲しいから、※
「どぉいうことかしらねぇ、れぇおぉぉぉ?」
ルーシィに呼び出されて、ちょこんと正座した獅子宮の星霊。
バツが悪そうにぽりぽりと頬を掻く。
「いやぁ…どうしてもって言われて…」
「どおしてもじゃないっ!!」
サラマンダーよりも強烈な炎がルーシィの背後に見えるのは、気のせいか?
せっかくの可愛いその顔立ちが、若干崩れているような。
「オーナーのピンチを差し置いてまで行かなきゃいけないデートなんて、どんな大切なものなのかしら!?」
「いやぁ…ねぇ?」
「ねぇ?じゃないっ!!」
怒りからか、全身がふるふると震えている。
―…ヤキモチ?
…なんて思ってること、口に出したら絶対に殺されそうだ。
どーしてあんたは!!とか何考えてんの!!とか。
次々とまくし立てるルーシィ。
とりあえず、怒りの波が治まるまでじっと待つ。
ぎゃーぎゃー言い続けていたがルーシィが、ぜーはーぜーはー…と荒い呼吸で酸素を補充しながら、口を閉じた。
「…私に呼び出されたくないのなら、そう言ったらどう!?」
じろり、と睨みつけてくる。
予想しない方向へと向かった結論に、少し焦った。
「そんな事、思ってないよ」
「じゃあ、どうして!!」
「彼女がどうしてもって…」
「それは聞いた!!」
―やっぱり、騙されてはくれないね。
「…言えない。言いたくない」
僕の出した答えに、納得なんかしてくれないのは分かってたけど。
「でも、僕は君の星霊だ。呼び出されたくないなんて、思ってない」
本当の理由なんて、話せない。
「…もういい。分かった」
やや置いてから、静かに鍵を振り上げた。
俯いてしまったその表情は、読み取る事ができなかった…。
「どうなさったんですか?」
星霊界でひとり、樹の下でぼんやりしていた僕に話しかけてきた星霊。
同じオーナーを持つ…処女宮のバルゴ。
「いや、ルーシィにこっぴどく怒られてね」
参ったよ、あはははーなんて軽く返せば。
「一体、どうなさったんですか。らしくないですね」
あっさりと見抜かれる。
―…あぁ、バルゴは鋭い。
「くだらない…実に、くだらない理由だよね」
僕は、星霊で。
彼女は、人間で。
そもそも住む世界も存在自体も全く違っていて。
「ルーシィは人気者だからねぇ」
だから、僕が星霊界にいる間。
彼女が誰と出掛けていようと。
彼女が誰と笑っていようと。
彼女にとって、僕は関係のない存在で。
「いっそ、僕がニコラだったらよかったのにな」
愛玩星霊で、いつも呼んでもらえて。
常にルーシィと行動を共に出来るなんて…羨ましくて。
呼んでくれないから、自分の魔力を使って人間界に降りていけば。
いつも耳に入ってくるのは、僕がいない間の君の毎日。
ナツと仕事に行ったんだよね。
グレイと買い物に行ったんだよね。
僕が、星霊界にいる間に。
オーナーがイチ星霊にいちいち行動を報告しなきゃいけない義務なんてないのに。
僕の知らない君を外野から知る事が、とても辛い。
悔し紛れに、呼び出された時にバルゴに協力してもらって居留守を使った。
(もちろん、敵のレベルを判断した上で、だけど)
“デート”だって聞いたら、君も僕と同じ気持ちになってくれるんじゃないかと思ったから。
「…いい加減、認めて素直にぶつけたらいかがですか?
オーナーは、とても素直で純粋な方ですけど、イマイチそういう事には鈍いみたいですから」
―早く伝えないと、鳶に油揚げ掻っ攫われますよ?
相変わらずの無表情で、さらりととんでもない事を告げるバルゴ。
油揚げ(ルーシィ)を掻っ攫う鳶には心当たりがある。それも複数。
もしかしたら、今この瞬間にも攫おうとしているかもしれない。
(ルーシィは僕のものじゃないけど)
居ても立ってもいられなくて、ゲートを開く。
後ろでバルゴが少しだけ笑ってくれたように感じた。
ねぇ、ルーシィ。
僕は君の星霊で、人間じゃないけど。
君を想っても、許されるよね?
願わくば。
君のその瞳が、僕だけに向いてくれますように。
「ルーシィ」
「レオ?」
僕の気持ちを、伝えよう。
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2010.10.14
こっそり拗ねてたレオ。
悔し紛れに居留守を使ったという…。
おこちゃまですね!!
本編で出てきたデートは、実は嘘なんだよ、と。
私的希望を書いてみた。(笑)