お題<book> 1
□気づいてお願い気づかないで<ナツside>
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―元気がない。
いつもの“ナツー!!”って笑顔が消えてる事なんて、知ってたさ。
でも、どうしていいかなんて…オレには、分からなくて。
元気がないから励まそうと思っても、オレには、ロキのように相手の気持ちをうまく転がす?とかできねぇし。
(意味はよく分からないけど、相手が喜ぶんだってミラが言ってた)
いつもいつも、“ナツのバカー!!”なんて怒られてるオレが近づいたら、余計に傷つけるんじゃないか、…って。
そう…思ってたら…なんか、話しかけたりも出来なくなって……。
ルーシィは、どうして笑わない?
ずーっと、それこそ飯喰ってる時も考えたけど、やっぱり分からなくて。
本人に直接聞いたら早いけど…、それでまた怒らせたら……。
※気づいてお願い気づかないで※
<ナツside>
ぷつん。
考え過ぎて、突然キレた。
―あぁぁもうこんなウダウダ悩んでんのは性に合わねぇ!!
「グレイ!勝負だ!!」
とりあえず、手近なところでこのもやもやを吹っ飛ばす!
「あぁ?なんだぁ?いきなり何言い出すんだよ、お前は!」
「いいから殴らせろ!!」
「はぁ?俺がお前に殴られるとでも思ってんのか?」
「うっせぇ!!」
問答無用で飛び掛る。
予定外の事に一瞬反応が遅れたものの、グレイも即応戦してくる。
どかーん、ぱりーん、どごっ。
イスが飛ぶ。テーブルが飛ぶ。ついでに酒樽も飛ぶ。
がっしり組み合って睨み合って弾き飛ばして拳を突きつける。
幾度となく繰り返してきた喧嘩。
ただ無心に暴るだけで、その後、必ずどんなもやもやでも吹っ飛んでいた。
―だから、このもやもやを綺麗に吹っ飛ばすには暴れるしかないんだ!!
単純明快。
ギャラリーも加わって、それなりに意識を戦いに向けていたのに。
ふと視線を向けた先。
ルーシィの隣に、ロキが並んでその金髪に手をぽんぽんと置いたのが見えた。
―カチン、ときた。
「グーレーイィィ!!」
「何なんだよ、テメェは!!」
「うっせぇ!!」
彼女の隣に当然のように並んで座って、両肩を掴んで自分の方へと向けさせるロキ。
少し間の後、“くすっ”と笑った(ように見えた)表情を、浮かべた。
しばらく見ていなかった、ルーシィの笑顔。
それを出したのは、ロキ。
―なんでこんなにムカムカすんだよっ!!
「っざけんなぁぁあ!!」
暴れて、スッキリしてくるハズなのに、ちっともスッキリしなくて。
それどころか、ムカムカはますます胸に積もるばかりで。
「火竜の…!!」
何を破壊すればスッキリする?
このもやもやをどこへぶつけたらスッキリするんだ!?
乱闘を続けるオレ達の横を、振り向くこともなくルーシィは通り過ぎて行った。
オレの視線に気づいて。
オレの叫びに気づいて。
このどす黒いもやもやに、気づかないで。
そして、―…振り向いて、笑って。
そのもやもやの原因に気づいて欲しい、彼女。
その怒りの原因に気づいて欲しくない、彼女を見守る彼。
そのどれにも気づかない、桜色の彼。
気づけば。
気づかなければ。
何かが変わる。
気づいて、そして、…気づかないで。
―Fin―
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2010.10.13
何とかナツに戻ってこれて一安心。
ナツは純粋過ぎて書くのが難しいです。
捻くれまくった私にはあの単純明快な思考回路がワカラナイ!!←
これにて、“強がってばかりの私”は終了。
お付き合いありがとうございました!