お題<book> 1
□私はそんなに強くないから
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『私そんなか弱くなんかないわよ!』
…嘘ばっかり。
強がりの私に気付いて欲しいなんて、身勝手だ。
※私はそんなに強くないから※
「ルーシィはマヂで強ぇよなぁ〜」
それは何気ないナツの一言だった。
「…何なの、突然」
久々に、街で買い物をした帰り道。
両手に大量の荷物を抱えた(全部私のだけど)ナツが、突然、関心したようにうんうんと頷きだす。
「いやー、ロキとか街中で言い寄ってくるヤツとかのあしらい方見てるとよー…」
「だから、何?」
「ルーシィってやっぱ最強だよ!」
「…は?」
何の脈絡もない“最強”の2文字。
まったく理解できないその流れに、説明しろとナツの眼を睨む。
「だ、だって、あの隙のないあしらい方に血も凍るような眼!!」
横で見てて凍りついたぜー…と、小さく呟く。
「んなっ!」
確かに、ついさっきも「ねぇねぇ、今ひとりー?」「これからみんなで楽しいとこ行こうよー」「絶対楽しいからさー」とかいう意味不明な事を言う3人組を追い払ったところだが。
そこまで酷い言われ方をするような対応はしていない!…と思う…。
「っていうかナツ!あんた男なら私に群がってくる害虫ども(酷い)をちゃんと追っ払いなさいよ!」
「えー、なんでだよー」
「なんでって…か弱いくて可憐な女性が男に絡まれてるのよ!?助けて当たり前でしょう!」
「『か弱く』て『可憐』な女性ねぇ…」
か弱い女性が鞭振り回して雄たけび上げて男を追い払うかね…と、無言で訴えてくる。
―うっ。
た…確かに、そんな事もあったかもしれないがそれはナツが守ってくれないから仕方なくやっただけであって私の本意ではなくて…っ!!
「オレだって最初は助けようと思ってたんだけどなぁー…」
いっつもルーシィの行動の方が早くて、手を出す前に終わっちまうんだよ、と。
ぷうっと頬を膨らまして冤罪を訴えるナツ。
「うっ」
そ、それについては反論できないかもしれない…。
ついカッとすると手が出てしまうのはどうしようもないのだから仕方ない。うん。
「だから、もうオレは手出しするのを止めたんだ」
「えっ?」
「ルーシィは、オレが守んなくても十分生きていける!最強だ!」
突然のナツの言葉。
頭から、ざあっと血が落ちていく音が聞こえたような気がした。
守らなくても。
十分、生きていける。
私“ひとり”で。
そう、言ったのか。
私の手を引いて、フェアリーテイルへ連れてきてくれたナツが。
そのナツでさえ、私は“ひとり”で生きろ、と。
純粋に“強さ”を求めるナツにとっては、最上の褒め言葉だったのかもしれない。
ただ単に、その場のノリで言った言葉だと、そう頭の中では理解しているけど。
でも、ソレは私にとっては…。
急に黙りこくった私の顔を、心配そうに覗き込むナツ。
「おーい、どーしたー?」
ひらひらと、目の前で手のひらが動く。
何でもない…と、ようやく返した私にめり込んできたのは。
「なんだー?やっぱり守って欲しいのか?うししし」
にかっと笑う顔。
ここで「うん」って笑えば、可愛い女の子なんだよ。
ここでこの少し照れくさくて、でも嬉しい心を表情に出せばいいだけなんだよ。
「ば…っ!ナツのバカー!!」
…可愛くない。
分かっているのに。
表に出るのは、いつも強がってばかりいる私。
守られる為に、ココにいるんじゃない。
でも、もう“ひとり”で生きていくのは嫌なの。
みんなと一緒に、ひとりの人間として並んで立ちたい。
飼われた籠の鳥なんかじゃない。
でもね、本当はね。
怖いの。苦しいの。支えて欲しいの。
大丈夫だって、背中を押して欲しいの。
「私は、守られなきゃいけないほど、か弱くなんかないわよっ!」
膝を抱えてうずくまる、私を助けて。
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2010.10.12
ロキルーにハマッて巡回するウチにナゼかナツルーへ転びそうな私。
…おかしいなぁ…。
ルーシィ独白からスタート。
本当の彼女は前向きのような気がするが、私は暗いのが好きなのだ!(ぇ