Gift/お宝<book> 2
□恋色の華模様
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「うわ、凄い人…」
特設会場という名の川岸に辿り着いた瞬間、ルーシィの口からこぼれ落ちた台詞。
そこに含まれている意味に、ナツも激しく同意だと息を吐く。
まるでマグノリアの人口が全てここに集まったかのような、一面の人混み。
少し離れた場所にいる今でさえ、その熱気に巻き込まれてしまいそうだった。
「どうするの?ナツ」
夏といえば祭り。
祭りと言えば花火。
というしごく一般的な流れで催される花火大会。
開始時間まで余裕があるからと屋台を渡り歩いていたのが甘かったらしい。
花火を見るのに最適な場所は、すでに人の山。
2人がもぐり込める様な隙間はないだろう。
「だから早く行こうって言ったのに」
ぷぅ、と頬を膨らませるルーシィの様子は明らかにご機嫌ナナメ。
その原因は自分にあるとさすがに理解していたナツだったのだが。
生憎、口いっぱいに頬張ったたこ焼きのせいで頷く事だけで精一杯。
じろり、と睨みつけてくるルーシィに愛想笑いだけを浮かべ。
もぐもぐと何とか必死に口の中のものを飲み込んだ。
「だーかーら!すまねぇ、って」
「すまねぇ、じゃないわよ。本当に反省してるの!?」
「してるしてる」
「軽いわね…」
暗雲立ちこめるルーシィの背後に誤解だと手を振ろうとするも、屋台で買い込んだそれらが邪魔をして動かす事も出来ない。
呆れたように溜め息が落とされるのを聞きながら、ナツは仕方ねぇだろと密かに眉を顰めた。
本当はこんなにも買うつもりも、必要も、なかったのだ。
元はと言えば、ルーシィがそんな格好をしてくるのが悪い――。
「なによ」
「いぁ、何でもねぇ」
「ふぅん」
すぐ興味なさそうに外された視線にホッとしながら、そっと気付かれないように横目でひらひらと揺れる裾を確かめる。
淡いピンクを基調にして、大小色鮮やかな花が咲いた浴衣。
祭りだからとルーシィが着込んできたそれは、普段の服装に比べれば断トツに肌の露出面積が少ない、のに。
このドキドキと五月蝿い心臓は。
「ちょっとナツ。まだ食べる気なの!?」
「んっ、ふるへぇ」
「…呆れた。もう好きにしたら?」
「ふへっ」
すたすたと先を歩き始めたルーシィの背中を追いかけながら、やはりひらりと揺れる浴衣を見つめる。
ピンク色の生地に咲く、ひときわ目立つ黄色の華。
裾の動きに合わせ、まるで花びらが舞っているかのよう。
「んんっ、…待てって!」
「あんたは好きなだけ食べてなさいっ」
「ルーシィっ」
右手にイカ焼き、左手に焼きとうもろこし。
ムードもへったくれもない状況だけど。
舞い踊る“華”を逃がす訳にはいかなくて。
「置いてくなよ!」
「もう知らなーいっ」
下げていた袋に全部突っ込んで、逃げて行く背中を全速力で追いかけた。
□恋色の華模様
「この浴衣を選んだ意味、分かってないんだから!」
「何か言ったか?ルーシィ」
「別にっ!!」
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2012.07.23
「FAIRY☆LIFE」ココア様に捧げるハピバ。
CP指定なしで、「夏祭り&浴衣」という事でしたが。
最近ナツルー書いてる流れで、自然とナツルーに。
だ、大丈夫でしょうか…?
すっかり遅くなってしまってごめんなさい!
お誕生日、おめでとうございましたv