お題<book> 2

□カミサマ、この恋を
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※カミサマ、このを※









いつもの喧騒もすっかり消え失せ。

照明も落ち、薄暗くなったギルドの中。

がらんとした空間に“カラン…”と鳴り響く氷の音。

グレイは、残り僅かとなった琥珀色のアルコールをぼんやりと見つめ。

もう一度、ゆらりと揺らす。



―――カラン。



グラスの壁に当たって鳴る音に耳を澄ませ。

ひとり、ふっと静かに息を吐いた。



ゆらゆら揺れる琥珀色。

彼女の瞳と同じ色―…。



「何やってんだい?」



横から降ってきた声に驚きもせず、さりとて顔を向ける事もせず。

軽くグラスを持ち上げる事で返事をするグレイ。

ロキはくすりと笑い、ひとつ離れた席へと腰を下ろした。



「ひとりで?」

「たまにゃ〜、な…」

「ふぅん?」



カラン、と氷を揺らすグレイ。

その目は優しげで、―…どこか嬉しそうで。

その“琥珀色”の向こうに誰を思い浮かべているか、なんて。

苦もなく、容易に想像が出来てしまう。



「お互い苦労が絶えないよねぇ」



ふふっ、と笑ったロキに、“何のことやら”とグレイは肩を竦めるだけ。



想い人は互いに同じ。

光り輝く金糸の髪をした少女。



グレイは彼女がギルドに来た時から。

ロキは彼女に救われてから。



ずっと、ずっと。

彼女だけを、見つめてきた。

“いつかこっちを振り向いて”―…そんな淡い期待を抱きながら。



―――でも。



「気付かないんだよねぇ…」

「あぁ?」

「こんなに愛しているのに」



“こんなにイイ男が!”…なんて、くすくすと笑うロキ。

グレイは“バーカ”とぽつり零す。



「あれ?もちろん君も入ってるんだけど?」

「…そりゃ、どーも」



カランカランと氷をぶつけ、残りを一気に飲み干して。

タン、と小気味よい音と共に、グラスはカウンターへと戻された。



「…お先」



くるりと背中を向けたグレイへ。



「渡さないよ」



追ってきたロキの声に振り向き、正面からその目を見据えて。

くっ、と唇の端を持ち上げる。



「…お互い様」



“じゃな。あんまり飲み過ぎんなよ〜”とヒラヒラ手を振り出て行くグレイ。

ロキはその背中が見えなくなるまで見届けてから、前へと向き直る。



カウンターに残された、グレイのグラス。

中には、独りぼっちのまま残された氷。



―――独りきりの、“氷”―…か。



「God would be … with us」



ロキが、己のグラスを置き去りにされたソレへ“コン”、と当てる。

まるで返事をするかのように、グラスの中の氷が――カラン――と鳴った。

********************

2011.02.19

何だろう…コレ。

摩訶不思議な物体(笑)が出来上がってしまった…。

本当は、40000打記念Freeを書いていたんだけども。

これではあまりに酷い(というか誰もいらん)だろうと判断し、急遽お題へと変更。

何となく…大人な人を書きたかったのー!(自爆)

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